昨日に引き続いて、リビングのトイレ絡みの話。
現在、我が家のリビングには、脱臭機が二つある。
これと、
これ。
上の写真がオゾン式脱臭機で、下が光触媒式の空間除菌脱臭機である。
なぜ、二台も置いているのかというと。
リビングにトイレを置くようになり、我が家にもニオイ問題が発生した。
このとき、最初に買おうと思ったのが、下の写真の空気清浄機「ターンドケイ」である。
出会いはコロナ期。とある店舗でこれを使っているのを見、能書きを読んで、いいなと思った。
コロナ期だから、細菌やウィルスに強いというのが好ましく響いたし、だいいち、フィルター交換が要らないというのが、個人的には魅力だった。デザインもシンプルで好みだ。
とはいえ、一人暮らしゆえ、家の中の空間除菌には差し迫った必要を感じおらず、その時は「そのうち買おう」で終わってしまっていた。ちょうどその時期、近所の家電量販店の店頭で同じものを見かけていたので、いつでも買える、と、のんびり構えていたというのもある。
で。
コロナは落ち着いたが、その後、我が家では、深刻なニオイ問題が発生。
じゃあ、アレを買いに行こう!と、件の量販店に出張ることと相成った。
普段、店舗で買い物することを嫌う私が、なぜ通販でなく、実店舗に行くことにしたか。
理由は、「ポイントで買えるから」である。おそらく、パソコンを買ったときに大量に付与されたのであろう。気付いたら、けっこうな額になっていた。
ターンドケイは、空気清浄機としてはお高めである。だが、ポイントで買うならノープロブレムだ。
と、いうわけで、いそいそと空気清浄機売り場に急いだわけだが。
(な、ない…。)
そもそも、空気清浄機の売り場自体、私の記憶にあるよりかなり縮小されていた。当たり前である。私の記憶は何しろコロナ期なのだ。当時、家電売り場は何につけ「除菌」を前面に押し出していた。空気清浄機はそのいわば花形である。
さらに、ウィルスにも強いとされるターンドケイが、売り場の中でひとかどの地位を占めるのは当然の話で、裏返せば、コロナ期を過ぎた今、彼が現場を去っていても何の不思議もないのだ。
途方に暮れた私は、狭い売り場を、多分、四周くらい、ぐるぐると巡り歩いた。
だが、いくら私がおまじないを唱えつつ売り場をぐるぐるしたところで、彼が戻ってくるわけでもない。
あのとき、さっさと買っておけば良かった。もう遅いけど。
この時点で、私に残された選択肢は二つ。
その一。通販でターンドケイを買う。
その二。ターンドケイを諦め、この売り場で別の製品を買う。
私は第二の途を選んだ。理由は「ポイントで買いたいから」である。即ち、現金を出し渋ったのだ。
その場で、さらに売り場を五周くらいして、陳列された製品を吟味したが、ターンドケイを諦めた今、私の目には、どれを買っても同じに見えた。
と、いうわけで。
一番安い製品を買うことにしたのである。
なお、このオゾン式脱臭機には、先行機種があって、なぜかそちらの方が少し高かった。新しい機種には、脱臭機能の他、アロマディフューザーがついているのに、である。
分からなかったので、店員さんに聞いた。
「何でこの製品は、こっちの方が機能が高いのに安いんですか?」
結論から言えば、店員さんも知らなかった。だが、
「まあ、こっち(先行機種)の方は、時計と温度計が付いてますからね。」
そこは私も迷うところではあったのだが、先行機種の方は、形が四角形で、正直、見た目が味気ない。アロマディフューザー付きの方が、明らかに女子ウケを意識していて、見た目が可愛い。と言っても、そこは私としては、別にこだわりどころではなかったのだが。
「こっちにします。」
アロマディフューザーなんか使わない。(猫のいる部屋でアロマは使えない)
それは分かっていたが、そっちにした。デザインが可愛いし。
というより、ちょっとだけど、こっちの方が安かったから。迷うなら安い方を買おう、と考えたのだ。
ここまで書けば、たいていの人には分かると思うが。
後から考えると、やっぱり、時計と温度計付きの方が我が家には良かった、と、ちょっと後悔している。
何しろ、我が家にはまともに動いている時計が一台しかないのだ。温度計もない。
判断を誤ったのが、デザインのせいなのか、値段のせいなのか、自分でもよく分からない。
後から考えるに、おそらく、本来ならより高額なはずの後発機種の方が割引率が高く、お得感があって、それに引っ張られたのではないか。
そのオゾン脱臭機の効果は、正直、よく分からんといったところだった。
つけていないよりは良い気がする。だけど、劇的にニオイが減ったかと言うと、そこまでの驚きはない。
だいいち、部屋のニオイと言うのは、住んでいる人にはだんだん分からなくなってくるものなのだ。
このごろあんまりニオイを感じないな、と思っても、それが脱臭効果なのか、単に自分の鼻が慣れたせいなのか分からない。
でも、買っちゃったし、まあいいや、と思っていたのだが。
実は、その後、ターンドケイ購入に踏み切ったのは、ニオイ対策のためではない。
まさにそれ、彼が得意とする「空間除菌」のためなのである。
話はまた、違う方向に行く。
我が家のリビングは、隣の和室と襖で仕切られる造りになっている。和室には押入れがあるので、そこにも襖はある。
このマンションが建ったのは四半世紀も前の話であるが、当時、おそらくモダン和室を意識したのであろう、襖紙は白無地、襖縁は白木である。
これまでの猫は、押入れへの出入りの際に襖縁や縁際の紙に後脚を引っかけて損傷する程度で、故意に襖に危害を加えるようなことはなかった。
が。
最近になって、襖縁で爪を研ぐ連中が現れた。
アタゴロウを除く二匹である。
まるで同系色に引っ張られてでもいるかのように、茶色い連中が、アメ色に変色した襖縁を、立ち上がってバリバリとやるのである。
こんなこともあろうかと、猫たちが立ち上がって爪をとげるよう、リビングにはガリガリウォール(それも二十センチ高い「プラス」の方)を設置しておいたにも関わらず。
ん?
栗助くんにおしっこされたからである。
やむを得ない。新しい爪とぎを買うか。
そこで思い出したのが、職場のアメショ飼いの後輩の話である。
宅の猫に、高さ百二十センチくらいあるポール型の爪とぎをプレゼントしたら、木登りを始めて可愛かった、と。
我が家の、もともとガリガリウォールがあった場所は、新しい大型猫トイレにすでに占拠されている。それに、同じ場所にまたガリガリウォールを置いたら、またおしっこされてしまうかもしれない。
なら、いっそ。
うちも同じようなものを買おうかしら。
もしかしたら、きなこが木登りするかもしれない。(ちょっと見てみたい)
と、いうわけで。
通販で購入したのがこちら。
この大きさだと、爪とぎというよりキャットタワーの分類になるらしい。
ネットでいろいろ調べていると、立派でお高いキャットタワーがたくさん出てくるのだが、今回はキャットタワー目的ではなく、あくまで爪とぎである。シンプルで、そしてなるべく安いのを探して、これに決めた。
組み立ては、そこそこ大変だった。構造は単純だが、何しろ麻縄を巻いてあるので、扱う際にチクチク痛い。
設置場所は、ケージとキャットタワーの間にした。そこが一番邪魔にならないからだ。その前提で、ハンモックの向きも決めた。
想定外だったのは、糊の匂いがキツく、なかなかリビングに置ける状態にならなかったこと。
そして、これは想定内だが、きなこが何度か木登りをしただけで、当初は誰も爪を研がなかった。
そして、さらに。
想像だにしなかった事態が、我が家を襲う――
時は梅雨時。草木も眠る丑三つ時(よりは早い時刻である。)
ふとキャットタワーの方を振り返った私は、何か不吉なものを感じ、しばしそちらを凝視した。
雰囲気が暗い。
言い知れぬ陰気さを感じる。
薄暗い影が差しているのだ。どこに?キャットタワーの近くに。
まるで足元から忍び寄り、全身を侵食していくかのような、影。
それがすでに、半身を覆いつつあるのだ。キャットタワーの隣の爪とぎの。
早まる鼓動を抑えながら爪とぎに歩み寄った私は、一目見て思わず悲鳴を上げた。
新しい爪とぎの、室内側に向いた縦半分。その下半分を中心に。
覆っていたのだ。微細な触手を伸ばす黒い影が。もとい、カビが。
「いや、驚いたわよ。まさか、キャットタワーにカビが生えるなんて。」
正確には「爪とぎ」であるが、相手は猫飼い経験のない友達である。分かり易く、そう説明した。
「やっぱり、湿気が多かったからかしらね。」
「それもあるけど、それだけじゃないと思う。だって、お隣のキャットタワーとか、すぐ近くにあるラタンの猫ベッドとかは、全然大丈夫だったし。」
「うーん、不思議だね。」
「やっぱりね、安いものを買ったから、その辺の処理が甘かったんじゃないかと思う。防カビ加工的な。」
私の脳裏には、あの強烈な糊のニオイの記憶がある。
「お隣にあるキャットタワーは、A社製なの。A社はペット用品としても、生活用品としても、大手企業でしょ。ちゃんとした製品なのよね。A社のキャットタワーは、一回もそんなことなかったわ。」
もちろん、糊のニオイもしなかった。
「つまり、安物買いをしちゃ駄目ってことね。学びましたよ。」
「そうね。」
友人は短くそう答えると、にっこりと優しい微笑みを浮かべた。慈母のような微笑みだった。
そして、ここでやっと、ターンドケイが登場するのである。
カビの生えたキャットタワーもとい爪とぎを、どうしようか私は思案した。
(もう、捨てるしかないのかな…)
買ったばかりだけど。
もったいないけど、仕方がない。だが。
別のことに気付いて、私はハッとした。
捨てるとなったら、また解体しなければならないのか!
あんなに大変だったのに。しかも、多少なりとも猫の爪がかかって、さらに麻縄がチクチクになっているというのに。
私は、爪とぎを捨てない道を模索し始めた。
結局、「次亜塩素酸で消毒する」という方法を知り、それで見事、カビ退治に成功するのだが、その時に考えてしまったことがある。
カビが繁殖するということは、即ち、空気中にカビ胞子が浮遊しているということである。
今後、カビを防ぐためには、湿気対策のみならず、カビ胞子対策も必要ではないか。
だって、何しろ、我が家には喘息持ちの猫がいるのだ。
(ちなみに、「次亜塩素酸」は「次亜塩素酸ナトリウム」(ハイター)とは別の物質で、無害である。有機物と化合し水と微量の塩に戻るという性質を持つため、残留の危険性もない。)
翌日、私は通販サイトでターンドケイを注文した。
カビ胞子への効果は見た目に分からないが、とにかく、購入して良かった。
ターンドケイは、脱臭機能も優れている(と、思う。)
やはり、これを導入してから、我が家のニオイ問題は(トイレにブツが残っていない限りは)ほぼ解決したようなのだ。
オゾンを放出するだけでほぼ無音のオゾン脱臭機と違い、こいつは、センサーがニオイを感知するとファンが元気に回り出す。素人はそれを聞いて「おお、脱臭してるな」と認識し、それで精神的満足を得る、という側面があるのも否めないが。
ただ時々、猫どもが為すことを為した際には発動せず、私が料理を作り始めると全力で回り始めるというのは、礼儀としていかがなものかと思う。奴らのプロダクツより、私の料理の方が臭いというのか。
ところで。
ついでながら、我が家にはもう一つ、最近増えた猫グッズがある。
これ。
新しいペットキャリーである。
半年ほど前から、近所に住む後輩が、我が家に遊びに来るようになった。一度招いてみたら、猫を遊ばせるのが上手だということが判明。実は「猫と一緒に育った」ということをカミングアウトしたので、だったら、是非きなこと遊んでやってよ、と、時々来てもらうことにしたのである。
秋口、思いついて、彼女に頼みごとをしてみた。
猫たちのワクチン通院を、手伝ってもらえないだろうか、と。
快くOKしてくれた。それも、
「だったら、自転車で来ますよ。自転車ありますから。」
有難い話である。
我が家の猫たちは、故あって三匹ともワクチン時期が同じである。できれば、三匹いっぺんに連れて行って、一度で済ませたい。このため、彼女に応援を頼んだのだが、私は車を運転しないので、三匹連れていくならタクシーかなと思っていた。だが、彼女が自転車で来てくれるなら、分担して自転車二台で行けばいい。
しかし、我が家にはペットキャリーが二個しかない。
どちらかに二匹一緒に入れることも考えたが、短時間とはいえ狭すぎるだろう。災害対策もあるし、この機会に、もう一つキャリーを購入するのもアリではないか。
購入するにあたり、私が考えた条件は五つ。
ソフトタイプ。
折り畳み可能。
天面が全開すること。
肩に掛けられること。そしてさらに、長いストラップをつけて「たすき掛け」にもできること。
現在あるペットキャリーは、一つがリュック型、もう一つが、昔ながらのプラスチック製の箱型である。自転車で通院する際は、箱型なら後ろの荷台にくくりつけ、リュック型ならそのまま背負う。
だが、一度に両方を使おうとすると、背中で二つのキャリーがぶつかってしまうため、リュックを背負うことができない。必然的に、リュックは前抱えとなるのだが、これが不安定でチンドン屋風になることは、すでに実証済みである。
つまり。
今回の作戦としては、彼女にリュックを背負ってもらい、私は荷台に箱型をくくりつけ、さらにお腹側に猫を抱えて行くつもりだった。
そのために、体に沿うソフトタイプで、かつ、たすきがけで体の前に「本体」を配置できる、布製のキャリーバッグが欲しかったのである。
最初は「ペピィ」などのカタログから探したが、手頃なものがない。
高機能だったり、見るからに立派で丈夫そうだったり、良いものだとは思うのだが。
(キャリーバッグって、結構高かったのね…。)
そもそも、サブのサブ程度のバッグである。とりあえず必要な機能を満たしていれば、そんな立派な、高級なものは要らないのだ。
そこで、ネットを検索すると、出るわ出るわ。お手頃価格から高級品まで。
とはいえ、条件を加味するとかなり絞られ、その中でも破格に安かったこの製品に決めた。
選ぶのに意外と時間がかかったせいもあるが、決めた時点で、通院予定日までにあまり時間がない。同じ製品を複数のショップで売っていたが、「海外の倉庫から取り寄せるので時間がかかります」などと書いてあるショップは避けた。
が。
想像はつくと思うが、書いていないだけで、結果は同じだった。なかなか届かないと思ったら、届いた製品は、どうやら海外(東南アジア)から送られてきたらしい痕跡があった。
まあ、ギリギリだけど間に合ったからいいや。
と、思いつつ、早速開梱してみる。
色やサイズは想像したとおり。布もしっかりしているし、縫製も問題ない。
ただ、
(あれ、これ、錆びてない?)
スナップの一つに、錆が出ていた。
ちょっと嫌な感じがしたが、普段ほとんど使わないと思われる場所のスナップだったので、気にしないことにした。
が。
何だろう。違和感がある。
広げているうちに分かった。何となく、内張りの布にベトつきを感じるのだ。良く見ると、内側に何か所か、油のシミのようなものがあった。
(やだな、汚い。)
製造工程で機械油でも付着したのだろうか。返品しようか、という思いが頭をよぎったが、何しろ時間の制約がある。
(まあ、洗えばいいや。)
それが間違いだった。
結論から言えば、シミは落ちなかった。そもそも、機械油の付着などではなかったのである。
あまり使わないプラスチック容器を久しぶりに取り出してみると、全体が妙に油っぽくなっていたりする。しまうときに洗い方が足りなかったのか、と思ってしまうが、実はこれは、湿気による加水分解でプラスチックの可塑剤が溶け出したものである。
確証はないが、内張布に付いていたベタベタは、この可塑剤である。察するに、メッシュ部分に使われているビニール素材から可塑剤が溶け出し、接していた布にしみ込んだものではないだろうか。
内側だし、見た目にシミがあったって構わないが、ベタベタするのは困る。だが、一度洗ってしまったので、もう返品はきかない。
ネットで方法を検索しつつ、何度も何度も洗い、いったんは諦めて放置し。
でもね。
最終的に、ベタベタは取れて、使える状態になりましたよ、昨日。
そう。
文字どおり、年を越して昨年の恨みを雪いだのである。
「で、大騒ぎしたんだけど、結局、二匹しか連れて行かなかったの。その二、三日前から、アタゴロウの膀胱炎の調子が悪くてさ。」
キャリーバッグが届いた一か月後くらいだったろうか。例の友達と会った際に、猫どものワクチン通院の話をしていた。
「あら、大丈夫なの?」
「まあ、アタゴロウもいい歳だしね。先生に聞いたら、去年打ってるから、慌てなくていいって。」
ダメちゃんも、晩年は二年に一度であった。
「それにしても、焦ったわ。まさか洗ってもベタベタが落ちないとは。洗っちゃったから、返品できないしね。」
「不良品だったってこと?」
「というより、保管状態が悪かったんだと思う。プラスチックって、湿気が多いと加水分解するんだって。スナップも錆びてたし、多分、湿気の多い倉庫に、長期間、しまわれてたんじゃないかな。」
何しろ、海外の倉庫である。東南アジアだから湿気が多かった、と考えるのは、さすがに短絡的すぎるだろうが、値段を考えると、それほど大切に扱われていたとは思えない。少なくとも、空調の効いた倉庫ではなかったのだろう。
「ま、しょうがないよね、安いんだから。安物買いの銭失いってやつよ。」
それを聞くと、彼女は、私を見てにっこりと微笑んだ。忍耐強い小学校の先生のような微笑みだった。
「ねえそれ、この間も言ってなかった? キャットタワーのとき。」
「あ…。」
以上が、昨年の私のお買い物失敗談である。
つくづく、私は買い物が下手だ。その根底に、この学習能力の低さがあることが、一連のエピソードから読み取れると思う。
でもね。
確かに、これらはみな、私の判断ミスですよ。つまらないところでケチったお陰で、安物買いの銭失いをしちゃったことに、間違いはないですよ。
だけどさ。
そもそも原因を作ったのは、全部、栗助くんだと思うんだよね。
おい、聞いてるか!? 諸悪の根源。
ちなみに、今日は「不成就日」だそうである。
何事も成就しない日。ゆえに、新しいことを始めるには縁起が悪いとされる。同じく、大きな買い物をするのもNG。
なので、うっかり暇に任せてお買い物サイトなどを覗いてみたりしないよう、自戒と自制の意味を兼ねて、このブログを書いている。