またしても

 あたくし、お義母様に命を狙われましたのよ。
 先程、あたくしがキャットタワーのてっぺんまで登りまして、天井の突っ張り部分に触っておりましたところ、突然、片手の爪が引っ掛かってとれなくなってしまいましたの。
 驚いて、あたくしが思わず悲鳴をあげましたら、何と、お義母様が脚立を持って近づいておいでになるじゃありませんか。
 あたくし、ただならぬ気配を感じましたわ。
 そう、間違いありませんわ。お義母様は、そうやってあたくしをキャットタワーの上に釘付けにしておいて、誰も見ていない隙に、あたくしを始末するおつもりだったんです。
(ぼく見てたけど…ダメ註)
 でも、天はあたくしをお見捨てになりませんでした。間一髪、お義母様の手があたくしの体に触れた瞬間に爪が外れて、あたくし、死に物狂いで逃げましたの。
 やはり思ったとおりでしたわ。お義母さまは、あたくしに逃げられたことを悟ると、さっさと脚立を片付けておしまいになりましたもの。それに、そういえば、数日前から、お義母様は、ずいぶんあたくしの爪のことを気にしておいででした。先日、ダメちゃんの爪をお切りになっていたのは、ご自分の仕掛けた罠に、間違ってダメちゃんがかからないようにという、用心だったのでございます。
 本当に、今考えてもぞっといたします。あの狭いタワーの上で、身動きのとれぬまま息の根を止められて…きっと、あたくしが誤ってタワーから転落した「事故」として片付けられてしまったに相違ありません。「猿も木から落ちる」ならぬ「猫もタワーから落ちる」ってね。でも皆様、よく考えてごらんになって。古今東西、キャットタワーから転落死した猫がおりましたでしょうか?あたくしは、ひとりも存じません。皆様、よく覚えおいてくださいましね。猫は、キャットタワーから落ちたりしないんです!
(いや、ミミさんは落ちてた…。姑註)