重要なお知らせ

 サボっているうちに、ネタが貯まってしまった。
 とはいえ、ネタは生モノである。放っておくと、賞味期限が切れる。これまでも、
(面白いネタなんだけどな…)
と、自分のスボラを棚に上げ、何やら未練がましい気持ちを残しつつ見送ったハナシは、数知れずある。


 が。


 これだけは、見送るわけにはゆくまい。
 あまりに重大なニュースなのである。
 曰く、



 身内の恥ですから、大きな声では言えませんが、 
(小さな声で)…7㎏。


 過去の最大記録を更新してしまった。


 以前、書いたことがあるが、我が家の猫体重計測方法は、「まず人間が猫を抱いて体重計に乗り、次に猫を下ろして、手ぶらで体重計に乗る」である。
 その日、久々にダメの体重を量ってみようと思い立ったのは、本当に、単なる思い付きであった。
 ダメは、ヨメが来てから、順調に体重を落としていた。若いヨメを貰ってハッスルしているうちに運動量が増えたことに加え、その後、常食のカリカリを、それまでの「w/d」よりさらにローカロリーな「満腹感サポート」に変えたことも、功を奏したものと思われる。
 ただし、猫が好むことで定評のあるR社製の「満腹感サポート」は、思ったほどダメの好みには合っていなかったようであった。
 ダメは、ヨメの「フィーメールケア」(雌猫用の維持食)の方を食べたがった。多分、そちらの方がおいしいのであろう。ちょっと気の毒な気がした。
 もうだいぶ痩せたから、ダメにも「メールケア」(雄猫用の維持食)を買ってやろう、と、思い立って、購入した矢先のことであった。


 とはいえ。
 そのもっと以前から、私は甘くなっていたのだ。
「満腹感サポート」のカロリーの低さに油断して、「ちょっとだけ」量を増やしてやっているうちに、いつのまにか、結構な上乗せになってしまっていたらしい。
 さらに、よく考えれば、ヨメも仔猫の頃ほどは激しく走り回ってはいない。しかも、ダメ自身、ヨメを「テキトーに遊ばせる」術を、いつの間にか身につけていたものと思われる。
 ふと気がつくと、「痩せた」と強く感じた頃より、いくらか肉付きが良くなった気がする。気のせいだろうか。でも、ピーク時ほどは太ってないよな、と、ホンの確認のつもりで、ダメを抱いて体重計に乗ったものである。


 時は、猫の夕食時間前。
 ということは、私の夕食も、まだである。
 私は、空腹でよく頭が回っていなかったらしい。
 ダメを抱いて体重計に乗った時、その数値が意味するところに、その時点では気がつかなかったのだ。
 続いて自分の体重を量り、騒いでいる猫共の皿にウェットフードを盛りつけながら、頭の中で引き算をした。
 あれ?
 いやだ、私、引き算できなくなっちゃった。
 最初に私の頭に浮かんだのは、そんな結論だった。


 猫共の食事を眺めながら、もう一度、ゆっくり考えた。
 自分が見た、体重計の二つの数値を、目の前に思い浮かべてみた。
 一瞬、気が遠くなった。
 私が計算を間違えたのではない。この現実が、間違っているのだ。


 その現実の間違いを糺すべく、私は、ウェットフードを食べ終えたダメを捕まえて、もう一度、体重計に乗り直した。
 もがくダメが一瞬大人しくなり、ぴたりと確定した数値は、しかし、私の記憶にある1回目の計測から、100グラムしか減っていなかった。
 やはり、あれは夢ではなかった。
 打ちのめされ、半ば呆然としつつ、私は暴れるダメを放り出し、祈るような気持ちで、再び体重計に足を乗せた…


 そのとき、私は、人生で初めて、自分の体重が増えていることを祈りながら、体重計に乗ったのだった。 





(いや、ぼくは気にしてませんから、どうぞお構いなく。)
 少しは、気にしましょう。