猫のしっぽ


 朝、猫どもにごはんを食べさせていたら、ふと、二匹のしっぽが目に付いた。
 うちの猫どもは、とりあえすしっぽだけは立派である。
 ボブテイルやカギしっぽも、それはそれで可愛いなと思うのだが、やはり、しっぽが長いと見ごたえがある。長いしっぽは様々な動きを見せ、実に表情豊かだからだ。
 先日、「Cats安暖邸」で、ライアン社長とさっちゃんがケンカを始めたところを目撃した。その時、スタッフの方が
「ライアンはしっぽがないから、表情がわかりにくいんですよね」
と、おっしゃっていた。
 猫は表情筋が少ないので、よく目を見ていないと、顔の表情は分かりにくい。その分、しっぽが感情を伝えている、というところだろうか。
 女優のサラ・ベルナールは、自分の尻に豹のしっぽを移植してほしいと懇願して、外科医を困らせたという話が残っているそうな。
 猫を知らない人が聞いたら、それこそ笑止千万だが、日々、彼らのしっぽを眺めている猫飼いには、この大女優の気持ちは良く分かる。


 話は戻るが。
 今朝の猫どものしっぽは、冒頭の写真のような状態で近接していた。
 見ているうちに、ふと、魔がさした。
 前々から、こいつらのしっぽは、実は長さが同じなのではないか?と思っていたので、どうにもそれを確かめてみたくなったのである。
 どうせ、奴らはメシに夢中で、細かいことには気がつきゃしない。
 と、いうわけで、巻尺を持ち出し、しっぽのすぐ上空に添わせる形で、しっぽの長さを測ってみた。



 結果。
 ダメ:およそ25センチ。
 ムム:およそ34センチ。


 何と、ムムの方が、9センチも長かったのである。


 ダメを最初に動物病院に連れて行ったときに、
「この子は、ちょっと尻尾が短いのね」
と、言われた。
 私としては、充分長しっぽだと思ったのだが、確かに、全体のバランスからすると、少々短めに見える。
 ただし、しっぽの長さ25センチは、それ自体としては、別に短くはないと思う。
 ダメは胴体が長く、ケツがデカい。さらに、しっぽの付け根がぶっといので、相対的に短いと判断されてしまうのだ。


 そこで、ついでに胴体も測ってみることにした。
 首からしっぽの付け根まで。
 ダメ:およそ38センチ。
 ただし、このとき、猫どもはすでに朝飯を食べ終わってしまっていたので、この測定は、あまり正確ではない。
 とはいえ、数年前に頭から尻までを測ったときに45センチだったから、まあ、だいたい合っているであろう。
 で、ムムは…


 が、私が巻尺を手に振り向いたとき、彼女はすでに消えていた。
 

 あくまで推測であるが、ダメが胴体38センチなら、ムムはせいぜい、30センチちょっとではないか。
 少なくとも、35センチには達していない。
 おそらく。
 ムムの場合、しっぽの方が、胴体より長いのである。


 確かに、このヨメは時々、自らのしっぽの長さを持て余しているようにさえ見える。
 しっぽを立てて歩いてくるとき、常に、尻尾の先だけがくねくねとうねっている。
 ダメと並んですわるとき、しっぽをくるりと体に巻きつけるように床に置く…のは、どの猫でもやるが、こいつは、それを、これ見よがしにダメの首元に巻きつけてみたりするのである。
 それは、ちょっと見方を換えると、もの凄いコケットリイの示し方、ともとれる。
 もし、こいつが人間の女だったら。
 かほどやたらに、自分のチャームポイントをくねらせている女に、同性として、好感を持てるはずがない。
 早い話が、ヤな女である。


 こいつは、きっと、サラの真意を間違って理解しているに違いない。
 失礼な勘違いをするもんじゃないよ。
 彼女は、アンタみたいに、他にチャームポイントのない女じゃないんだからね。
 
 
 

(撮影お断り)