ヨメの黙示録

 ヨメの最近のお気に入りスポットは、キャットタワーの最上段である。
 当家は天井突っ張り式のタワーを設置しているので、最上段は天井から50センチほどの高さであろうか。ヨメはそこの、猫一匹分しかない狭いスペースに陣取り、体の下に脚をたくし込んでくつろぎタイムを過ごしている。
 いかにも猫らしく、またヨメらしい、お気に入り場所の選択ではある。


 が。
 やつは、やはり、ただくつろいでいるわけではなかった。


 今朝、気が付いた。
 彼女が、キャットタワーの最上段からじっと見つめる視線の先。悪意のオーラを放つ、その狙いすました眼差しが標的として捉えていたものは。


 …照明器具。


 お前、まさか、そこに跳び移ろう、なんて目論んでいるんじゃないだろうな。


 彼女の跳躍力をもってすれば、それは充分に可能である。
 だが、彼女の体重を考慮すれば…その後の惨劇は、想像するに余りある。


 仮に、照明器具が彼女の体重と体当たりの衝撃に耐えたとしても。


 …お前、その後、一体どうするつもりなわけ!?


 あの猫頭の中に、その先を慮るだけの賢明さが格納されていることを、祈るばかりである。


 願わくは、終末の日の訪れざらんことを。