続・女の闘い

 昨日、信じがたいことあった。
 私がソファで本を読んでいたら、ヨメが私の膝に乗りかかってきたのである。
 膝の向こう側の何かに用があるのかと思ったら、そうではなかったらしい。
 あくまで、私の膝に乗りかかることが目的であるようだった。
 といっても、ヨメは私の片方の膝に腹をつけて乗り「かかった」だけで、膝の上に座ったり丸くなったりはせず、別に何もしないで降りた。
 そういうことを、3回ほどやった。


 まだある。
 これは数日前からなのだが、猫どものウエットフードを皿にもりつけていると、ヨメが爪をひっこめた前足を出して、私の脚をチョンチョンする。
 一般的に言えば、かわいいおねだり行動である。


 さらに、まだある。
 ヨメは相変わらず遊び食いをするのだが、自分の分のウェットフードを食べ終えても、続きはダメが食べ終わらないと出てこないということをようやく学習したらしい。最近では、ウェットがなくなったタイミングでふらりと遊びに行くようになった。
 で、自分のドライが出てくる段になると、戻ってきて皿の前に座る。
 このとき、私はまず、その前の食事の残り物があったらそれを先に食べさせるので、こうした場合は、残り物の次に新しいドライフードの「お代わり」をすることとなる。この「お代わり」のおねだりの時、ヨメは、自分にできる精一杯の可愛い顔を作って、私の膝先から私を見上げるのである。
 まあ、もともとが大して可愛い顔ではないので、表情だけ作っても、人間のハートをとろかすには程遠い、と、言わざるを得ないのではあるが。


 この、媚の売り方。
 もっとも顕著だったのは、ジンちゃんである。それから、りり。なな姐さんは、見た目は美少女アイドル系であるが、性格は立派な九州男児であるから、そんなことはしない。ななに比べたら数段なよっちい本物の男子・ダメちゃんも、「くれ、くれ」の直球勝負のみである。
 女の戦術、と、いうわけか。
 お前、そんなん、どこで覚えたんや!?


 そんな見え透いたカマトトぶりで、姑を手玉に取ろうなんて。
 しゃらくさい。
(まあ、悪い気はしないけど・・・) 


 と、思っていたら。


 つい、先ほど。
 ヨメがリビングの床に、長くなって寝ていた。
 無防備さがちょっと可愛く見えたので、「ムムちゃん」と呼びかけながら、背中を撫でてやった。
 すると、ヨメは目を開き、続けて横寝だった体をまっすぐに起こし、さらには立ち上がって、私の手を振り切り歩き出したではないか。
 ヨメが歩み去った先は、すぐ近くの食卓の椅子の下で、横寝の姿勢で丸くなっていた、ダメの胸元。
 平和に惰眠を貪るダーリンの胸に潜り込んだヨメは、私に撫でられたときにばっちりと覚醒したはずの目を再びうっとりと閉じて、眠り続ける彼の喉元を、いかにも優しげに舐め始めたものである。
 それは、どこから見ても、非の打ちどころなく美しい夫婦愛の光景であった。
 平たく言えば、ラブラブの光景であった。


 何だ、こいつ…
 思わず、唖然として眺めてしまった私。


 超、カンジ悪い。


 というわけで。
 嫁・姑の女の闘いは、まだまだ続く・・・。



(あたくしに気安く触らないでいただきたいわ。)