媚を売るのも命がけ

 この頃、ヨメの態度が友好的である。
 どんな心境の変化があったのか知らないが、このところしばしば、「前後の文脈から判断するに、どうやら甘えているつもりらしい」という行動を見せるのである。
 察するに、ようやくにして、人間には媚を売っといた方が得策だということに気付いたのであろう。が・・・


 どうも、その甘え方が、今ひとつ、ツボに入っていない。


 例えば。
◎ 私の膝や肘に鼻を近付け、いつまでも匂いを嗅いでいる…以上。その先はなし。
◎ 私の膝に手をかけてよじ登り…そして、そのまま踏み越えて立ち去る。
◎ 私が床に脚を投げ出して座っていると、投げ出した脚の足首に寄りかかる。(もうちょっと近くに寄りかからんかい!)
◎ 通りすがりの背中を撫でてやると、その場で一度立ち止まり…そのまま姿勢を低くして、匍匐前進に切り替えて立ち去る。


 先日の行動。
 私の膝頭の匂いを散々嗅いだ後、突然、頭を下げて、私の膝にゴツン。
 そして、そのまま歩み去った。


 おいおい、そんな甘え方があるかい。


 そして、今日。
 凄いことが起こった。
 ヨメが、私の腕を舐めたのだ!!!
 10ヵ月目にして初めての快挙である。


 が。


 どうも、その舐め方が、気に食わないのよね。


 ヨメは、例によって散々私の腕の匂いを嗅いでから、ちょっとだけ舌を出して、私の腕を舐めた。
 しかし。
 舐めながら、最初から腰が引けている。
 注意して観察していると、ヨメの奴、何事か決意したような表情で、一瞬、ちょっとだけ舌を触れてから、さっと頭を引っ込めていた。
 そして再び、散々匂いを嗅いでから、またちょっと舌を出して、一瞬だけ私の腕に触れ、また慌てて頭を引っ込める。
 二度、三度、そんなことを繰り返していた。
 ほとんど、毒見である。


 まあ、いいけどね。



 やはり相変わらず、カンジの悪いヨメではある。


(猫は敷居をまたがなくても、七人の敵がいるんですのよ!)
うちには、最初から私一人しかいませんが…