野生の証明

 ある朝。
 不思議な物音に目覚め、寝室の隣のリビングを覗いてみると…


 ヨメが例の畳ラグの中央に陣取り、藺草のささくれをくわえて引きちぎっていた。
 ちょっと!! それ、ど真ん中なんですけど。
 ほれ、やめんかい!!
(と、私が騒いだら、さっさと逃げて行ったヨメである。)


 ラグで爪を研ぐこと自体、見つければ叱っている。が、内心ひそかに(仕方ないかな…)と、一定の理解は感じている。
 しかし、こいつの許せないところは、何につけ、爪でひっかいてとっかかりを作ったところを、口でくわえて引きちぎるのである。
 和室の壁紙しかり。
 トイレの壁紙しかり。
 そして、今回の畳ラグときたもんだ。
 何でこいつは、こう、「くわえて引きちぎる」が好きなんだろう。


 と、ここまで考えて、突如、気がついた。
 これって、要するにネコ科の動物の狩りと一緒じゃない?


 テレビで見る限りでは(といっても、そのシーンが鮮明に映し出されることは滅多にないが)、ライオンもトラも豹も、捕まえた獲物を食べる時、前足で獲物の体を押さえつけて、肉を歯で引きちぎっていたような気がする。
 してみると、こいつの行動は、ネコ一族の末裔として、本能にプログラミングされた、狩猟本能の一端なのか…。


 ええ。確かに言いましたよ。
 猫はちょっと野性味が残っている方が魅力的だと。
 でも、この半端な残り方って、どうよ!?
 壁紙やラグを引きちぎるのが、野生の魅力ってワケ?


 何か間違ってる…(と、思う。)




(じゃ、あたくし、本日からスカーレットと改名させていただきますわ。)

 何?
 野生の淑女だと!? 


 馬鹿言ってんじゃないよ。
 お前なんか、「野生のエルザ」だって褒め過ぎだい!!