ふたつ、不埒な悪行三昧
一つめ。
朝、起きたら、私の居間の床には、花が撒かれていた。
私を愛する誰かからの、贈り物だろうか。
(んなわけ、ないでしょ。)
言うまでもなく、正解は、私を憎む(?)ヨメの嫌がらせ。
どういうわけか、こいつはトルコききょうに反応する。
リビングのカウンターの上に、ミミさんの骨壷と花瓶代わりのタンブラーを並べて置いてあるのだが、そのタンブラーに私がトルコききょうを活けると、ヨメは必ず、引き抜いてばらまくのである。
他の花には、そういうことはしないのだが。
私にではなく、トルコききょうに何か恨みがあるのかも。
財産をだまし取られたとか。
男を寝取られたとか。
女郎屋に売られたとか。
そういえば、ヨメがリトルキャッツさんに保護されるまでの経緯って、聞いたことがない。(数ある保護猫の中でも超目立たない一匹だったから、どうせ聞いても分からないだろうと思い、敢えて尋ねなかった。)
この女には、夫や姑には言えない、忌まわしい過去でもあるのか…。
と、ヨメを疎んじる姑は、悪意に満ちた憶測を逞しくするのであった。
二つめ。
先程、私がお風呂から上がったら。
…ん!?
眼鏡をかけていないからほとんど見えてないけど、対面カウンターの上に黒い影。
それが何だかひらめいた瞬間に、目が合った。
言うまでもなく、正体は、私の言いつけを敢えて無視する、挑戦的なヨメ。
カウンターは、猫の上乗り禁止である。
「こら!!」と、大声で叱りつけると、ヨメの奴、よりによって、調理台の上を横切って走り去った。
まあ、私がリビング側から怒鳴ったためではあるけどね。
その後は、猫追物の大立ち回り。
隅に追い詰め、「だめでしょ!!」と、叱りつけていると、絶体絶命のヨメ、尻尾を膨らませて、
「シャ…」
だって。
おいおい、姑に向かって、シャー言うんかい、オマエは。
しかし、こいつの場合、シャーは怒りではなく怯えのサインなので、「叱責効果あり」と見なして、立ち回りは終了。
ただし、その後も、ヨメは私を見ると、そそくさと逃げている。
と、ここまで書いたところで。
突然、膝にチクリと痛みが。
見れば、カーペットに座ってパソコンをたたいている私の横で、ヨメが横寝になって大きな「伸び」。爪を切っていない前足が、私の膝に触れたのであった。
実は、今、横座りをしている私の膝の間には、ダメが寄りかかって寛いでいる。
コワい姑から逃げていたヨメであったが、ここに至って、仲間はずれが寂しくなったらしい。
だったら、もういい加減、姑に逆らうのはやめることね。
と、言っても無駄だろうけど。
ところで、件の大騒動の間、夫たるダメはどうしていたか。
結論から言うと、声も立てず、微動だにせず。
私が見たときは、目は開いていたが、九割方、寝ていたのであろう。
少なくとも、家庭内のいざこざに、完全なる無関心を決め込んでいたことに、疑問の余地はない。
典型的な、嫁姑関係がこじれる家庭のパターンである。