猫の鑑


 ご報告が遅れましたが。
 太次郎くん、もとい、大治郎くんを、予防接種に連れて行って参りました。
 で、気になる体重は…
 

 6.6㎏。


 最悪の事態を覚悟していただけに、飼い主はこっそり安堵の息を漏らした。
 が、先生はぽつり。
「さっきのチワワの3倍だわ。」
 それは、チワワが小さいんですっ。


 とはいっても、本当のことを言うと、先生はダメちゃんが好きなのですよ。
 理由は、①ダメちゃんが先生の以前の飼い猫に似ているから。②先生が、キジトラ好きだから。③先生が、大猫好きだから(多分)。
 つまり、察するに、ダメちゃんはど真ん中なんですな。


 以前にも、「こういう猫好き。ヤマネコ系。」と言ってもらったことがある。(だが、私が思うに、ヤマネコっぽいのは被毛の柄だけ)
 今回は、立派なお尻や太い尻尾を褒めていただき。
 そして先生は、その愛しいお尻を撫でて、一気にぶちこんだのであった。
 注射を、ね。
 ブチュっと。


 その後、話のきっかけは忘れたのだが。
「ダメちゃんは、生涯にまだ一度しか怒ったことがありません。」
という話をして、ほう、と、感心され。
 さらに、その一度だけの激怒とは、ヨメがやってきたときのことであるのだが、
「今は仲良くやってます。」
と、話したところ、
「エライ! 猫の鑑!!」
と、身に余る大絶賛を頂戴してしまった。
 なお、その生涯ただ一度のお怒りの後、ダメちゃんは、過労によりお熱を出してしまった(そして、先生にブチュっとやられた)という、微笑ましい記録も、動物病院のカルテにはしっかり残っている。


 猫の鑑、ねえ。
 うん、確かに。
 ダメは何でも喜んで食べてくれるし、それも残さずキレイに食べる。
 物も壊さない。
 噛んだり引っ掻いたりもしない。
 爪も切らせる。
 ブラッシングもさせる。
 毎晩、私が寝るときは、枕の横で添い寝。
 トイレにもついてくる。(これは余計か)
 抜け毛大魔王なのは別として、飼い猫としては、パーフェクトな生活態度かも。(おい、ヨメ。ちっとは見習え。)


 しかし。
 デブなのはちと困るな。


 と、ずっしりと重いキャリーに辟易しつつ、動物病院を後にしたのだった。


「大治郎なんて、名前が悪かったんじゃないの?」
と、先生はおっしゃったが。


 いいんですっ。
 大きいのは、最初から望むところだったんですから。
 それより、名前で験を担ぐのなら、先生こそ「太次郎」なんてハガキ、送らないでくださいよ。
 ま、面白かったけどね。


 もう用は済んだけど、あのハガキは、記念にとっておこう。