みかの原わきて流るる…

 朝、バスの窓からぼんやり外を眺めていて。


 あ…
 ダメちゃんのマドンナだ。


 件の女性議員のポスターが、ちらりと目を掠めた。
 ちょっと垢ぬけた、かな?(失礼!)


 そして、翌日。
 ポスターのことはすっかり忘れていたのだが、再び外を眺めていて。


 あ…


 今度は、すぐにピンときたので、わずかな時間だが意識して眺めた。
 ううむ。
 服装や髪形が変わってはいるが、全体的な雰囲気は、あまり変わらないかも。


 よかったね、ダメちゃん。
 キミの好きな、彼女のまんまだよ。


 と。
 そこではたと気がついた。
 そもそもダメちゃんは、彼女を見たことがあるのだろうか。


 私の知る限りでは、彼女の街宣カーは、我が家の前を通り過ぎたことしかない。
 本人が乗っていたかどうかさえ疑問である。
 さらに、もし、私のいないときに、彼女が車から降りていたとしても、我が家は4階である。ベランダから見下ろさないと、道路の様子は見えないのだ。
 室内にいるダメに、彼女の姿が見えるわけがない。
(まあ、クレーンとか梯子車で、4階の高さまで上がって演説したなら、話は別だけどね。)


 つまり。
 ダメちゃんは、会ったことのない相手の、評判と彼女の言葉(それも、人づて)だけを根拠に、恋心をつのらせているわけだ。


 まあ…


 ダメちゃんてば。
 平安の王朝貴族みたい。


(平安貴族物想ひの図)