スイッチ欠落
ダメちゃんは、歯が悪い。
歯肉炎が酷く、すでに歯が何本か抜けてしまっている。
「いっそ、全部抜けてしまうと、彼にとっては楽になるんだけどねえ」
と、獣医さんはおっしゃるが、かといって、じゃあ抜いてしまえ、というほどまでは減っていない。
ちなみに、抜けた歯(の1本)は、これである。
動物病院に行ったときに、持って行って先生に「歯が落ちてました」と見せたところ、先生は一瞥して一言、
「これは、お年寄りの歯ですな。」
・・・・・
絶句した。
まあ、それはムムの予防接種の時だったので、「ムムの歯が生え換わったわけではないよ」という意味であったようだが。
歯根が腐って抜けたものだから、ということであった。
ダメちゃんがお年寄り認定された、記念すべき第1回である。
実は、亡きミミさんも歯が悪かったので、ひょっとして、この歯肉炎って細菌性のものなのかな?という疑いを、ひそかに抱いていた。
歯が悪い猫は、唾液が多い気がする。ミミさんの食べ残しを、ダメは合法的にも非合法的にも片付けていたので、残りご飯についたミミの唾液から歯肉炎が感染したのではないかと、内心、ダメには少々申し訳ない気がしていたのだ。
だが。
先生によると、そういうわけではないらしい。
猫によっては、そういう体質の子がいるんですよ、ということであった。
ちなみに、実家のなな姐さんは、年齢を経ても、たいへん綺麗な歯をしている。芸能猫は歯が命、といったところか。
話は変わり。
毎朝の日課。
私が起きそうな気配を見せると、猫どもが騒ぎだす。
メシコールである。
面白いことに、それを家主に向かってアピールするだけではなく、なぜか、互いに追いかけっこを始める。1日のうちで、彼らが最も本気で運動する時間である。
お腹がすいた=狩りをしなければ、という本能の名残なのかな、などと考えを巡らしつつ、人間は毎朝、大変面白く、布団の中から眺めているのであるが。
今朝、眺めていて、思った。
ヨメが走ると、見えない。
平地を走っていると、黒い影が行き過ぎるのが視界を掠めるだけで、私の動体視力では、猫の姿を捉えることができないのだ。
こいつ。
…やはり、加速装置がついているらしい。
対するダメはというと。
「見えなくなる」ということはない。
ダメだって、決して運動神経の悪い猫ではないのだ。大きくて太っているから、ヨメに比べれば格段に体は重い。しかし、その分、走り方に迫力がある。
ライオンの狩りっぽいな、と、それはそれで、目に快い光景ではあるのだが。
しかし、ヨメの速さとは、根本的に質が違う気がする。
ダメには、加速装置がついていなかったのだろうか?
仔猫(といっても10カ月)時代は、もっと速かったような気がするのだが…。
あ、そうか。
歯肉炎のせいで、きっと、スイッチがとれちゃったんだね、加速装置の。
(ちなみに、私の愛読猫ブログ「こはる日和」のろーずまりーさんによると、「野良猫の中で一番捕まりにくいのが三毛、次が、アスリート系で逃げ足の速いサビ」ということでした。どうやら、サビにはアスリートちゃんが多いらしいです。
それにしても、三毛にしてもサビにしても、いずれも女子軍団なところが笑える。)