呪われた男


 
 昼間、外出から戻ったら、頭痛が酷い。
 喉が痛い。
 鼻水が出る。
 こりゃ、風邪だわ。
 熱はないようだったが、早めが肝心。さっさと布団を敷いて、家主は昼間から寝てしまったのであった。


 一度、目が覚めた。
 ダメが枕元で騒いでいる。
 時計を見ると、夕方の6時半。
 猫の晩御飯は7時以降と決めているので、
「もうちょっと待ちなさい。」
と、取り合わずに、再び寝てしまった家主。


 次に目が覚めたのは、夜中。
 時間は分からない。
 ダメは相変わらず枕元にいて、家主が目覚めたと見るや、つついたり、舐めたり、何とか起こそうと頑張るのだが。
 駄目だ。
 起きられにゃい。
 一度起き上がってセーターを被ってはみたものの、再び倒れて寝てしまった。


 そして。


 ひょえええええ〜。
 結局、朝になってしまった。


 それでも起きられない家主。


 具合が悪いから、と、言いたいところであるが、実はそうではない。
 何しろ、一晩中、リビングのカーテンを開けっぱなしにしてしまったため、部屋の中がいつになく寒いのだ。
 目は覚めたけど、布団から出られにゃい。
 そんな家主を、ダメはしつこくつついていたが、どうやら起きないらしいと見ると、今度は、同情に訴える作戦に出た。


 家主の眼前一面に広がる、哀愁のおしり。
 
 


(調子の悪い携帯のカメラで寝ながら撮っているので、分かりにくい画像ですみません。)


 家主がもぞもぞと動き始めると、向きを変えて、ひたすら視線を送ってくる。
 
 

 
 
 そして、家主が布団の上に起き上がると、自分も威儀を正して、真摯に窮状を訴えるのであった。
  
  

 
 
 もの凄い、必死のオーラが伝わってくる。
 が。
 やはり家主は、布団からダイコンを引き抜くことができないのであった。


 可哀想なダメちゃん。
 何しろ、何も悪いことをしていないのに、晩メシを抜かれたのだ。
 飼い猫にとって、メシ抜きは、究極の罰ゲームではないだろうか。
 それなのに。


 あれ、聞こえてくる…


 ここまでヒドイことをされているのに、ついゴロゴロと鳴ってしまう。
 彼こそは、呪われた咽頭を持つ男なのであった。
 
 

 
 
 ちなみにヨメであるが、こいつは日ごろから、家主が完全に起きて活動を始めると見極めがつくまでは、絶対に寄ってこない。
 無駄な努力は一切しない主義である。
 当然、お腹がいっぱいになるまでは、撫でようがさすろうが、ゴロゴロなんて言うわけがない。合理的な精神を持つ女である。