和解の季節

 

 
  
 夜。
 就寝直後、掛け布団の上にふと、圧力を感じる。
 ああ、来たな、と思う。
 猫たちは、私の掛け布団の上で寝る。 
 羽根布団なので、体がすっぽり埋まるのが暖かいのだろう。
 
 
 愛しいなあ、という気持ちになり、つい、手を伸ばして触れようとする。
 が。
 届かない。
 指先が、猫毛の先端に触れたか触れないかのところで、空を切る。
 二匹揃って、ぎりぎり私の手の届かない位置にいるのである。
 ちぇっ、と思いつつ、諦めて寝ようとすると。
 …音がする。
 ザッザッ、とか、ペチャペチャ、とか。
 何と、仲睦まじく、舐め合っているのだ。
 嫌な連中である。
 私を除け者にして、二匹でイチャイチャしおって。
 愛しいキモチは、あっという間に、姑のひがみに変わる。
 それもこれも、あのヨメが悪い。
 
 
 ダメちん。
 最近、冷たいじゃないか。
 数か月前まで、キミは私の枕の横で寝ていたのに。
 あんな女に入れ上げて。ヒドイ。
 
 
 と、いうのが、確か二週間前くらいのこと。
 
 
 昨夜。
 うつらうつらと眠りに入りかけた時、すぐ近くに猫の気配を感じた。
 薄眼を開けてみると、枕の横に、猫がいる。
 暗いので、どちらの猫か見分けはつかない…が。
 手を出してそっと撫でてみると、その手を舐め返してきたのである。
 
 
 ダメちゃんだ。
 帰ってきてくれたんだね!!(←?)
 やっぱり、キミが一番愛しているのは、私なんだよね。
 
 
 愛しさ、倍増。
 
 
 まあ、要するに。
 暖かくなったから、寝場所を変えたのであろう。
 でも、それって、寒くさえなければ、私の顔の横が、本来の寝場所ってことだよね。
 これこそ、愛の証しだ。
 
 
 それよりも、寒くなったらさっさと人間を見捨てて、暖かい羽根布団に埋もれて別の猫にくっつきに行くという行動はいかがなものか、ということは、この際、考えないことにしよう。
 
 
 ♪別れ話したのは、去年のことでしたね。
 一つ大人になって、忘れませんか〜。♪
 …って、歌があったよね、昔。(歳がばれる)
 
 
 春は仲直りの季節でもある。