アタゴロウ的テロリズム
寒がりなことにかけては、人後に落ちないと自負する私であるが、6月に入り、さすがに少しずつ、夏支度を始めた。
先週は、座布団カバーの掛け替え。
私が愛用している冬用の座布団カバーは、ペイズリー柄のサテン地である。もう15年近く前に通販で購入したもので、決して高級品ではないのだが、今になってみても、サテン地の座布団カバーというのは、それなりに珍しいのではないかと思う。私のお気に入りアイテムの一つである。
が…。
この冬を越して、その希少価値の座布団カバーは、こんなことになっていた。
犯人は、こいつである。
この男、よりによって、座布団で爪を研ぐのだ。
あのヨメでさえやらなかった、言語道断の嫌がらせである。
ついでに、和室の床にも、こんなものが落ちていた。
広げてみると。
こんなに大きく、壁紙を剥がし取っていたわけだ。
ちなみに、現在、和室の壁はこんなことになっている。
そして、昨日。
掃除をしていて、気付いた。
先週掛け替えたばかりの、夏用の座布団カバーが…。
おいっ!
もう、こんなコトにしちまったのか、オヌシは!!
こいつ、虫も殺さないような顔をして、実は静かに破壊王なのである。
と、いちいち怒っていても仕方がないので、模様替えは粛々と進む。
今日は、こたつ撤去後もリビングに置いていた、毛布の洗濯。
基本的には、人間の膝掛けに使うために置いてあったのだが、猫どもも敷物として使うので、洗濯しても取りきれないレベルに猫の毛だらけである。
そこで、乾いてから、「一毛打尽」を使って、しまい込む前に毛を取っておくことにした。
折しも、猫どもはそれぞれ、午睡を貪っている真っ最中。
静かに畳の上に、二つ折りにした毛布を広げ、毛取りを始めたのであるが――。
――はっ!
しまった。勘付かれた。
ほどなく姿を見せたのは、残念柄の破壊王である。
こいつの目的は、「一毛打尽」から繰り出される、猫毛の塊である。
こいつは何故か、猫の毛玉(主に大治郎氏原産)に目がない。であるから、毛の塊は、そのへんに溜めずに、その都度、ゴミ箱に捨てるべきだったのだ。私はその用心を怠っていた。
と、いうわけで、慌てて毛の塊をゴミ箱に捨てたのであるが。
破壊王は、その場を立ち去ってはくれなかった。
しかも、こいつは、こともあろうに――
せっかく苦労して毛を取った毛布の上に、堂々と座り込んだものである。
おいっ!
オマエがそこに座ったら、何にもならんではないか。
アタゴロウくん、どいてください。
コラコラ、どきなさい。
おい、どけったら!
どけったら、どけ!!
そして最終的に、強制排除となる。
が。
何しろ、アタゴロウである。
床に下ろされると、次の瞬間にはUターンして、毛布の上に戻って来る。
再び、強制排除――
――しても、また戻って来る。(しつこい)
終いには、私の膝によりかかって、残念柄の腹を出す始末である。
これを何回、繰り返したことか。
私がどれほどやる気をなくしたか、想像できる人は想像してほしい。
それでも無謀な闘いを闘い抜いて、最後に毛布をたたんでいると、
これを嫌がらせと呼ばずに何と呼ぶ。
極めつけ。
小さくたたんだ毛布を天袋にしまうため、脚立を取りにちょっと席を外してみたところ、
なにも、そんな小さいところに、わざわざ乗らなくてもいいのではないかと思う。
ちなみに、もう一方のお方は、その間ずっと、別室で爆睡していたらしい。
まあ、考えようによっては、毛布に乗ってきたのが、彼、即ち、抜け毛大魔王でなかっただけ、幸運だったということなのかもしれない。
その抜け毛大魔王であるが、そろそろ最盛期に差しかかり、ラグやキッチンマットの上に、抜け毛水爆を投下しまくっている。
夜、帰宅したら、真っ先に灯りを点けないと、キケンで歩けない。
やはり、彼の破壊力に比べたら、アタゴロウなんてまだまだ、ほんの雑魚なのである。
ダメちゃん、若者に余計なことを教えないでください。