今度は、腹ハゲ

　 　
　 　
　写真でお分かりいただけるだろうか。
　玉音ちゃんのお腹が禿げている。
　上記は昨夜撮った写真であるが、禿げができたのは、おそらく、ここ二、三日のことだと思う。数日前にはお腹の毛皮はふっくらしていたはずだ。
　ストレスによる過剰グルーミングで、よくこのような状態になると聞くが、我が家では初めてのことだったので、例によって、ネット検索してみた。
　やはり、ストレスという説が大勢であるが、もうひとつ、アトピー（アレルギー）という可能性もあるらしい。
　そういえば。
　こいつは仔猫時代、アトピーで顔が禿げたことがあったのだった。
　その後、そういったことは一切なかったので、すっかり忘れていたのだが。
　もちろん、ストレス説も捨てて良いわけではない。だが、最近、何か猫たちの生活環境に変化があったかと言えば、この土日でお祭りをやっていることと、あとは、先週の暑さに負けて、二晩ほど、夜じゅうエアコンをかけっぱなしにしたこと、くらいだろうか。いずれも、ストレッサーとしてはピンとこない話である。
　私なりに考えて、いちばん怪しいと思ったのは。
　フードである。
　つい最近、新しいフードをデビューさせた。
　ナチュラリーフレッシュの「サーモン＆チキン」。
　先日まで、同じナチュラリーフレッシュの「ターキー＆ラビット」を食べさせていて、パッケージが空になったので、同じシリーズの別の種類を出した次第である。
　我が家では、今、ダメと玉音には複数のフードを同時進行で食べさせるようにしている。、現在、ダメがアーテミスオソピュアとナチュラリーフレッシュ、玉音はモグニャンとナチュラリーフレッシュと、加えてダメが食べ残すアーテミスを食べている。
　実のところ、ナチュラリーフレッシュは、ダメにも玉音にも、あまり評判は良くない。食べるには食べるのだが、あまり積極的ではない。彼等的には、可もなく不可もなくといったところなのではないか。
　ナチュラリーフレッシュは良いフードだと思うのだが、ひとつだけ気になるのは、原材料名の欄に、栄養素の添加の表示がずらりと並ぶところである。総合栄養食の基準を満たすためであるし、栄養素の添加なら問題ないと思って選んだのだが、私が読んだキャットフード比較サイトの管理人さんも、「サプリメントのようだ」という感想を述べていた。
　基本的には問題のない栄養素であっても、添加物であるわけだし、何か玉音に合わないものが含まれているのかもしれない。
　病院に連れて行くべきか、激しく悩んだがやめた。仮にストレスが原因であったなら、玉音のような猫には、「病院に連れて行かれること」は、これ以上ないほどのストレスである。また、アレルギー性のものであったとしたら、結局「フードが原因では」という結論に辿り着きそうな気がしたからだ。
　と、いうわけで。
　翌朝、つまり今朝のことであるが、取り急ぎ、動物病院に電話してみることにした。
　
　
「今更なんですが、先生、先日の培養検査の結果は、どうだったんですか？」
「それがねえ。何にも出なかったんですよ。」
　いったいいつの話だ、というくらい前の、玉音のカビ疑惑の話。
　検査を頼んだっきり放置していた飼い主も飼い主だが、何も出なかったからって連絡してこなかった、先生もナカナカのんびりしたものである。
　まあ、すぐに毛が生えたし、先生から連絡もないから、これは何も出なかったな、と、だいたい分かってはいたのだが。
　で。ここから本題。
「実は、玉音のお腹が禿げまして――。」
　かくかくしかじか、と、状況を説明する。
「なるほど。で、痒がってますか？」
「ええ、多分。舐めるとき、ちょっと歯を立ててましたから。」
　昨夜、玉音がお腹をなめるところを観察したのだ。玉音はお腹のハゲの辺りを舐める時に、歯で軽く皮膚を加えて引っ張っているように見えた。
　ああ、痒いのかな、と、その時、思ったのである。（後から考えると、そうとも言い切れないような気もするが。）
「この子、アトピーもやっていますから、それかなと。」
　先回りして先生に告げる。先生だって、玉音の仔猫時代のアトピーなど、とうの昔に忘れていることだろう。
「アトピーはねえ。顔とか首とか、まあ顔周りによく出るんですよ。」
　そういえば、前回の玉音のアトピーは、顔だった。
「顔には出てません。お腹だけです。」
　続けて、フードの話をする。
「ああ、なるほど。」
　先生は、否定も肯定もしなかった。だが、その説はある程度支持されている、と、感じた。
「なので、とりあえず、フードを戻してみます。いずれにせよ、まあ、真菌じゃなくてよかったということで。」
　じゃあそれで様子を見て、ということになった。
　すぐ連れて来いとは、言われなかった。正直、ほっとした。
　私はもう、猫を捕獲することに飽きているのだ。
　
　

　
　
　そして今夜である。
　夕食に現れた玉音を観察すると、目の上あたり、額にかけて、昨日より赤くなっている気がする。
　やはりアトピーだろうか。
　ナチュラリーフレッシュはお蔵入りとなった。玉音はモグニャンを元気に食べた。
　そもそも、私が彼女の腹ハゲに気付くことができたのは、彼女がこのところ毎晩のように、「腰パン＋撫で撫で」をさせるからである。ハゲができたのが最近であると断言できるのも、同じ理由からである。
　その同じ玉音ちゃんが、昼間、押入れにいる彼女を撫でようとすると、本気でウーシャー言う。
　押入れから出てきても、夜七時より前は、触ろうったって、部屋中を逃げ回って、決して触らせないものである。
　やっぱり、本当は触られたくないのかな。
　夜の「撫で撫で」は、食事の見返りか、その夜の宿賃のつもりなのだろうか。
　
　
　ということは。
　やっぱりストレスなのか――？