とりあえず退院


  
 
 昨日は、病院が休診日のため面会できず。
 その間にかなり回復したようで、本日、予定どおり、いったん帰宅することになった。
 
 
「今日は良いニュースが多いです。」
と、院長先生。
 まず、熱はほぼ平熱に下がった。
 食欲はある。(八十パーセントだそうだ。)
 血尿はかなり改善した。また幽かに茶色っぽいが、ほとんど黄色に近いという。
 出血も、まだ出るには出るが、排泄などで「きばった」ときだけである。
 傷はほとんど治っている。
 ただし、
「おしっこは、自分ではまだしていないんですよ。膀胱を押してやれば出ますし、詰まりは全くないのですが。」
と、いうことだった。
 ウンチは、一応出たらしい。
 
 
 今夜、家に帰って、一晩様子を見る。
 おしっこが出るか。
 ウンチが出るか。
 ごはんが食べられるか。
 なので、敢えて今日は薬は出さない。
 シリンジでの給水は、尋ねてみると、それはやってくださいと言われたのだが、
「抱っこして飲ませるので、傷が心配なのですが。」
と、私が不安を伝えると、じゃあ、今日はやらなくても良いです、ということになった。直前に点滴をしてあるので大丈夫ということらしい。
「何か他に、気を付けることはありますか?」 
「とにかく、舐めさせないでください。カラーは絶対外さないでくださいね。」
 そのカラーであるが、さすがに二重のカラーのうちの一枚が取れて、黄色い方一枚になった。大きい方である。
 
 
 そして、帰宅。
 
 
 タクシーの中でも、か細い声で鳴いていたアタゴロウであるが、マンションの集合玄関を入った辺りから、家に着いたことが気配で分かったらしい。
 部屋の玄関ドアを開けて入り、
「ダメちゃん、ただいま。」
 声をかけると、二重ドア代わりの竹カーテンの向こうで、ダメが鳴いた。
 するとアタゴロウ、ひときわ大きな声で一声、鳴き返したものである。
「おじさ〜ん!!」 
 と、いったところだろうか。
 リビングに入り、キャリーを開けてやると、案の定、押入れに向かってダッシュしたが、意外なことに、押入れには入らなかった。
 カラーがあるので狭い所に入りにくいのだろうと、押入れの掛け布団を出し、空いた隙間にクッションを置いてやったのだが、見向きもしない。
 ひたすら、ただひたすら、家の中を小走りに近いほどのスピードで歩きまわっているのである。
 しばらく見守っていたが、きりがないので、部屋着に着替え、まずは猫トイレの始末を始めた。
 その猫トイレであるが、実は、昨日から砂を全て入れ替えてある。我が家で日頃使っている、崩れるタイプの木の砂が、今回はあまりよろしくないというアドバイスをいただいていたからだ。
 排尿の際、砂の上に座ると、砂が傷口についてしまう。その際に、払い落せるものにしなさいということだ。
 院長先生のお勧めは紙砂であったが、なにぶん、ペットショップが開いている時間に帰宅できないので、砂を探しに行く暇がない。困ったなと思っていたら、家にシリカゲルの砂があった。それもシステムトイレ用の「大玉サンド」というやつ。肉球にはさまらない大きな粒で、重さもあるので、傷口につかないことは確実である。そこで、院長先生に相談の上、それを採用することとし、アタゴロウが帰宅する前に他の二匹に使っておいてもらおうと、昨夜から入れ替えておいたのである。
 シリカゲルといっても、基本的に、砂は尿を吸わず、ペットシーツに吸わせるタイプなので、普段の木砂のときより、ペットシーツがびしょびしょになる。そのせいか、トレイの中で尿漏れしており、処理に少し手間取った。
 もっと厚手のペットシーツがなかっただろうか、と、別室に探しに行っていたら、砂を掻く音が聞こえてきた。
 慌てて戻ってみると、何と、アタゴロウがその砂の上に座り、おしっこの真っ最中ではないか!
 自力でおしっこが出ない、と、院長先生を散々心配させておいて、家に帰ったら三十分と経たないうちに、したのだ。
 しかも、その後、続けて立派なウンチもした。
 砂が違うから排泄してくれないかもしれないという懸念は、院長先生にも伝えてあったのだが、杞憂であった。
 
 
 排泄を済ますと、アタゴロウはようやく落ち着き、歩きまわるのをやめた。
 で。
 次は、ご飯をくれと要求してきたものである。
 c/dのウェットフードを出してやると、ガツガツと食べた。s/dのドライも少し食べた。ドライが少なかったのは、単純にウェットを多めに出したためであろうと思われる。
 また、病院では、ここ三日ほどドライフードしか食べていなかったので、ウェットが食べたかったということなのかもしれない。退院直前にドライをいくらか食べていたということも考えられる。
 いずれにしても、食欲にも問題はないようだった。
 
 

  
  
 食事が済むと、こんどは構ってくれと甘えてきた。
 台所にいる私の近くまで来て、短く「ニャ」と鳴く。
 これは、明らかに玉音ちゃんのパクりだ。
 
 

 
 
 その後、私は自分の夕食を済ませ、ブログを書き始めたところで、睡魔に襲われて撃沈した。
 一度目が覚め、お風呂を沸かしがてらリビングに戻ると、アタゴロウがリビングのビーズクッションの上でヘソ天になっていた。こちらを見て誘ってくるので、撫でてやると、スリスリゴネゴネと、これまでにない甘えっぷりであった。
 一昨日までは、私を見てシャー言っていたくせに。
 そのゴネゴネに散々付き合った後、ふと見ると、隣の座布団の上に座ったおじさんがこちらを凝視していた。無言の圧力を感じて、こちらにもひとしきり付き合っているうちに、すっかり目が覚めたので、こうしてブログの続きを書いている次第である。
 ちなみに、続きを書こうと再びパソコンに向かったところで、また砂を掻く音がした。見に行くと、何と、アタゴロウが二回目の排便をしていた。
 それを片付け終わると、付き合いの良いことに、一部始終を見守っていたおじさんも、本日二回目のスメール爆撃を行ったものである。
 
 
 なお、傷の方であるが、排泄の際に砂に少し血が付いたが、ポタポタ垂れるほどのものでなない。
 ヘソ天になっているとき、傷口もしっかり見せてもらったが、糸で縫ってあることがわかるだけで、綺麗な状態であった。ただ、傷そのものではなく、近くに一箇所、擦れて赤くなっているところがあった。エリザベスカラーを超えて舌が届いてしまっているのかと、ドキッとしたが、一生懸命舐めようとしている様子を見ても、それは有り得ないように思う。むしろ、何とか股間を舐めようと頑張っているせいで、カラーが内腿の高い部分に当たってしまっているのではないかと思われた。いずれにしても、傷からは少し離れた部分である。これは明日、先生に伝えて指示を仰ごう。
 
 
 ダメと玉音は、アタゴロウが歩きまわっている間は、少々戸惑ったようすではあったが、変に警戒したり、威嚇したりすることは全くない。優しいものである。
 アタゴロウ自身は、玉音が入院した際、二度とも退院時に「シャー」を言ったのだが。