学習しない男
本当に微妙だけど、ちょっと距離が近付いてきたかな。
まだ近付き過ぎるとお互いシャーを言うのであるが、細かく見ていくと、お互い近付かなくていい時に、敢えて寄って来たりするのである。
アタゴロウが、二階にある茶トラくんのご飯を盗み食いしていると、屋上もしくは四階にいた茶トラくんが、わざわざ三階に降りてきて、それを眺めている。(別に怒りもしないし、抗議もしない。アタゴロウがいなくなった後に、残りを食べたりもしない。)
茶トラくんが二階にいると、アタゴロウが近くの椅子に乗って、至近距離で眺めていたりする。
眺めているだけで何もしないという点は、べつに変わっていないのだが、その距離が、徐々に縮まってきている気がする。
「互いに興味を持っている」というのは、もしかして、こういう状態を言うのだろうか。
ついでに言えば、茶トラくんは、少しずつ活発になってきた。
まだ走り回ることはないが、猫らしく、目についたものをちょいちょいと前足でつついている。ようやく、好奇心が目覚めてきた様子なのである。
四階の窓から出入りするようになった茶トラくん。物理的に近くなったキャットタワーを、すっかり自宅の別棟と認識したようで、気軽に行ったり来たりしている。
キャットタワーに限らず、ケージの外に出ること自体、かなりハードルが低くなったようだ。(相変わらず行く先は限られているが。)
何しろ、私がケージの中にいる茶トラくんを撫でようとすると、触られたくない一心で、ケージの外に逃亡するのである。
つまり、少なくとも、私に触られるよりはケージの外に出る方がマシだと考えているわけで、これは喜ばしい進歩と考えて良いのではないだろうか。(いや、良くない。)
ケージの三階のクッションの上にいる茶トラくんを、私が撫でようとする。
→四階に逃げ、四階の窓からキャットタワーに飛び移る。
→キャットタワーのボックスに飛び込む。
→そこで袋のネズミになり、私に撫でまくられる。
…というループを、連続して三回繰り返した。
「お前さん、学習しない男だね。」
思わず、そんな一言が出てしまった私であるが。
彼がキャットタワーのてっぺんだの、ケージの屋上だの、高いところが好きなのは、実はそういう理由だったりしてね。
だとしたら、案外賢い奴である。学習はしないけど。