チャリエン未満

 土曜日の話。


 午前中にマンションの排水管清掃があり、作業中は玄関を解放するため、猫どもはあらかじめ、トイレ・水とともに、玄関脇の部屋に監禁。
 監禁するのも、ダメは抱き上げて連れていくだけなので、重いだけで手順は簡単なのだが、ヨメは気配を察して、逃げる逃げる。家じゅう追いかけまわし、最終的には、玄関まで走って行ったところを、リビングに通じるドアを閉め切って、うまいこと目的の部屋に追い込んだのであった。
 で。
 突然、身に覚えもなくタイホ・収監された猫ども。さらに、ドアの外では怪しげな騒音が鳴り響き、彼等としては、相当不安なキモチだったらしい。
 排水管清掃が無事終わり、お兄さんたちが立ち去った後、監禁部屋のドアを開けると、猫どもは凄い勢いで走り出てきた。
 しかし。
 まさかここまで娑婆への途を焦っているとは思っていなかったので、看守はリビングと玄関の間のドアを開けていなかったものである。
 まだ冷静さを残していたダメは、障害物に気付いてドアの前で立ち止まったが、パニックの余りすでに思考力を無くしていた(あるいは、最初から何も考えていなかった)ヨメは、リビングに入りたい一心で、幅10センチにも満たないドアの嵌め殺しガラスめがけ、ダメを飛び越えて堂々の体当たり。
 ハリウッド顔負けののガラス割りシーンが繰り広げられるか、と思いきや、幅10センチ未満のガラスに命中するには、ヨメはすでにマッチョになりすぎていた。
 即ち、結果的にはダメの真上でドアに体当たりしたヨメは、敗れた野望とともに、空しくそのまま落下したのであった。


 で。
 つまるところ、その落下した先(下)には、ダメがいたわけで。
 ドアに激突して落下したヨメも可哀想といえば可哀想だが、それよりも、落下されちゃった方は、たまったもんじゃない。
 何ともお気の毒というより、理不尽極まりないとしか言いようがないのであるが…。


 案の定、気のいいダメちゃんは、ちっとも怒らなかったのでした。
 大団円。