続・賢者の扉

 

 
 以前(12月3日)、ヨメが「リビングと玄関の間の扉を押し開けることができない」ということを書いた。その後、別の扉を押し開けているのを見て、ああようやく開け方を覚えたな、と、いったんは安堵していたのだが。
 結局、彼女はやはり、「押し開ける」ことを理解していなかったらしい。
 未だに、同じことを繰り返しているのを目撃してしまった。


 …ということを、1月の半ばに書こうと思っていたのだが。
 それから1カ月半が経過しているが、事態は一向に改善されていない。
 というより、むしろ、ある意味、悪化しているようにさえ、思われてならないのである。


 その1月半ばの一場面。
 ヨメは例によって、ドアの向こう側(玄関側)に座り、途方に暮れていた。
 私は近くにいたのだが、ヨメが本当に開け方を覚えたのかテストするため、また、覚えていないなら、自身で考えて学習してもらおうと思い、敢えて開けてやらなかった。
 すると、ヨメの鳴き声に気付いてか、ダメがやってきた。
 いや、ダメはダメで、自分が玄関に行きたかっただけなのかもしれない。
 ダメは、リビング側から、扉の隙間に前足をひっかけて、いとも簡単に扉を開けた。(この動作は、ヨメにもできる。)
 この時点で、ハチ合わせのヨメと、互いに隙間から手を突っ込んで、殴り合いの一幕が演じられたのだが。
 早くリビングに入りたいヨメが、結局、どうしたかと言うと。
 その場で見事な立ち幅跳びを演じ、ダメの体を頭からお尻まで、タテに跳び越えて、勇躍、リビングに進入したものである。
 その跳躍力は評価するが、せっかく扉を開けてくれた恩猫に対し、たいがい失敬なやつだ、と、家主は呆れたのであった。
 
 

 
 
 その次は、2月下旬の話。(写真は撮り忘れました)
 全く同じシチュエーション。
 ヨメが扉の向こうで鳴いていると、またダメがやってきて、扉を開けた。
 またしても、小競り合い。
 どうやら、隙間の優先通行権を巡って揉めたらしい。
 だが、今度の小競り合いは短かった。ヨメはダメの隙を衝き、彼の胸の下をするりとすり抜けて、さっさと先に通行したものである。


 で。
 本日。
 
 

 
 
 扉の向こうで哀れっぽい声をたてるヨメ。
 無視する家主。
 ダメがやってきて、扉を開ける。
 
 

 
 
 今度は、争いはなかった。ヨメは、ダメを先に玄関側へと通してから、悠々とリビングに入ってきた。
 しかも。
 ダメは一応、出ては行ったのだが、別段、目的はなかったようだった。
 確信はないが、どうやら彼は、事実上、ヨメのために扉を開けてやったように見えたのである。
 
 

 
 
 猫は学習能力が高い。
 そして、サビ猫は一般的に、賢い(と、言われる。)
 しかし、ウチのサビ猫は、その学習能力を、間違った方向に発揮したようだ。
 即ち、自分で扉を開けることを学ばずに、ダメに開けさせることをマスターしてしまったらしいのである。


 ていうか。


 ダメちゃん…
 キミ、人(猫)が良すぎ。


(ただし、この後、すぐに玄関から引き返してきたダメがヨメを追いかけ、キャットタワー上で本格的なバトルが演じられた。それが、ダメがヨメに利用されたことに腹を立てた結果であるのかは、当事者同士が口を割らないため、明らかではない。)