疑惑の晩餐

 このところ、ヨメの奴、遊び食いをする。
 集中力がない。
 食事時間中に窓を開けていたりすると特に、外の物音がいちいち気になるらしく、何かにつけ、食べかけのごはんを置き去りにして、窓辺での監視活動に入ってしまう。
 食べ物への執着が、ダメの四分の一くらいしか、ない。
 まあ、遊び食いをする猫なんて、世の中にいくらでもいるのであるが、我が家の場合、猫飯を放置すると置引き犯が暗躍を始める、という治安上の問題がある。したがって、置引き犯が自分のごはんを食べ終わるまでに正当な権利者が戻ってこなかった場合、とりあえず、残り物はすべて片付けることになる。
 食糧を放置するなんて、そんな緊張感のないことでは、我が家では生きていけないのである。


 そんなある日…とは、二、三日前のことであるが。
 夕食の際、例によってヨメは遊び食いをした。
 このため、例によって、ヨメの残りごはんは、残り物用の容器の中に、いったんすべて収納された。
 そして、ダメが食べ終わり、これまた例によってキッチンマットの上で顔を洗っているころ、ヨメは戻ってきて、ごはんの続きを要求した。
 今更何さ、とは思うものの、ヨメは総合栄養食であるカリカリを、一食分の半分も食べていない。このままでは栄養上の問題があると思われたので、仕方なく、いったん片付けた残りのカリカリを、再び皿にあけてやった。
 すると…


 何を思ったのか、ヨメの奴、疑わしげに自分の残り物のカリカリの匂いを嗅ぎまくった挙句、前足で一粒掻き出して床に落とし、その一粒を恐る恐る試した後に、ようやく皿に鼻を突っ込んで食べ始めたものである。
 

 カンジ悪過ぎ。


 お前さん、何かい?
 それじゃ、アタシがお前さんのごはんに毒を盛ったとでも?
 

 あのね、お嬢さん。
 もし、アンタを毒殺したいのなら、そんな回りくどいことせずに、最初からたんまり仕込んどいたわよ。
 見当違いの疑いをかけないでちょうだい。
 

(あら、違いますわ。
 お義母様は、最初は毒なしのごはんを出してあたくしを油断させておいて、あたくしが目を離した隙に、食べかけのごはんに毒を仕込もうとしたんです。
 いかにも、お義母様の考えそうなことですわ。)

 
 …そう思うんなら、途中でフラフラしとらんで、真面目に食べんかい!!




 追記。
 8日の記事「愛のない家庭」について、ご指摘をいただきました。
 曰く、「ミミさんは成猫で、ダメちゃんは生後10カ月で貰われてきたのだから、どちらも当家で『育った』とは言えないのではないか」と。
 なーるほど。
 それで辻褄が合いますな。


 おい、ヨメっ子。
 幼少時の生育環境にモンダイがあるのは、お前さんだけだってよ。