遅すぎた愛

 家主は明日の朝、帰宅予定である。
 姉からは、猫どもの近況報告のメールが、日々届いていたのだが。
 姉曰く「ムム子は、すっかり私の玩具の虜です」と。
 もう、普通に撫でられるようになったらしい。
 順調になついたものである。
 姉も、すっかりヨメが可愛くなったようだ。
 まあ、割と簡単に飼い主を乗り換える奴、とも言えるが。
 
 
 で。
 ダメちゃんである。
 
 
 昨日の姉のメールには、「ついに膝元に寄ってきた」と。
 寂しくなったのではないか、と、姉は書いていたのだが。
 私は断言する。こいつは、寂しいなら、最初の夜に私が帰らなかった時点から、すでに相当、寂しかったはずだ。
 なのに。
 今の今まで姉に甘えなかった、というのは。
 
 
 躾にキビしい姉に、度々叱られたから、というのは、分かる。
 しかし、姉だって、普通に猫を可愛がる(というより、結構メロメロに近い)人だし、現に、ヨメは叱られもせず、気に入られて、しっかりなついているではないか。
 何だか知らんが、奴の方が気後れして、なかなか心を開かなかったのである。
 
 
 まあ、それでも、後れ馳せながら彼も姉に心を開き、甘える気になったらしい。
 が。
 時はすでに、終了二日前である。
 
 
 …遅いよ、お前。
 
 
 そういえば、以前、海外旅行で1週間、母に猫どもの世話を頼んだときも、ダメがすり寄ってきたのは、確か終了二日前くらいだった。
 
 
 なぜ、いつも…。
 奴は遅すぎる男なのか。
 
 
 愛は自分から奪い取るものなのだ、と、彼はヨメに学ぶべきであろう。
 
 
 ダメちゃん、健在。