病院に行きました。

 

  
  
 ヨメが、熱を出した。
 
 
 数日前からムラ喰い気味だったが、昨日は朝から全くごはんを食べなかったので、今日、動物病院に連れて行った。
 元気がないこと、ごはんを食べないこと、それから、これはしばらく前からであるが、時折、咳なのか、吐こうとしているのか、ゲホゲホやっていること、を、先生に告げて診てもらったのだが、
「熱がありますね。」
と、いうことだった。
 体温計の数字が急上昇して40度を超えたので、
「こりゃ、食べられないわね。」と。
 原因は分からないが、猫には時々あることだという。
「何か、変な物を齧ったりしていませんでしたか?」
と訊かれ、どきっとした。
「あの、実は、花束の中の麦を…」
 何事もおおざっぱで深く考えていない飼い主は、その瞬間、一気に反省したのであるが。
 麦は、関係ないらしかった。
 注射(インターキャット)と皮下補液をしてもらい、様子を見ることになった。
「できれば、明日も連れて来てくれるといいんだけど。」
と言われたが、困ったことに、明日は日曜出勤である。出勤人数を絞ってあるので、おいそれとは休めない。
 飼い主が一人だと、こういうときに困る。
 
 
 実家から誰か来てもらって、病院に連れて行ってもらおうか。
 帰り道、つらつらと考えた。
 いや、無理だ。
 私の出勤時間と、病院の開く時間との間には、2時間以上のタイムラグがある。百歩譲って、私の出勤に合わせて家の者に来てもらったとしても、その間、ヨメはキャリーの中に入れておくのか?そうしたら、トイレは?(ペットシーツは敷いてあるけれど)
 かといって、捕まえてキャリーに入れるところからは、人には頼めない。何しろ、私以外の人間が家に来ると、人間の手の届かない所に潜ってしまう天才である。
 いずれにしても、可哀想すぎる。
 病院に連れて行かないまでも、誰かに留守番してもらおうかな、とも考えたが、同じ理由で、やめた。
 ヨメにしてみれば、知らない人間が家にいるよりも、むしろ誰もいない方が安心できるに決まっている。
 何しろ、彼女が警戒しない人間は、この地球上に私しかいないのだから。
 全くもって、不便な猫である。
 
 

  
  
 夕方までに、薬が効いて元気になってくれないだろうか、と、望みをかけたのだが、さすがに甘かった。
 朝よりは多少元気が出てきた気もするが、まだ食べてくれない。
 何度か、食べそうな気配を見せたので、病院で教えられたとおり「おかゆ」を出してみたのだが、その都度、においを嗅ぐだけで、カキカキして猫またぎ、である。
(絶食すると胃腸が弱るので、最初は、ウェットフードをお湯で伸ばしたものから与えるように、と言われた。人間が病後におかゆを食べるのと一緒。)
 ちなみに、ふやかしドライフードと、生クリームも試したが、いずれもにおいを嗅いだだけで終わり。
 もうちょっとで、食べそうなんだけどなあ。
 
 
 でも。
 
 

  
  
 いつものように、こんな恰好をするようになったから、いくらか調子が出てきたのだろう。
 
 
 ところで。
 ヨメが発熱しているおかげで、得をしている奴がいる。
 それが、この男。
 
 

  
  
 ヨメが食べないごはんやおかゆを、そのままにしておいても悪くしてしまうので、奴の盗み食いを黙認している。(ただし、食事の量は若干減らしている。)
 おかげで猫飯は腐敗しないが、我が家の社会構造は腐敗した。
 盗っ人の横行を、当局が、自らの都合で奨励しているのだ。
 嗚呼。
 正義はどこにいったのだ。
 悪い奴ほどよく眠る、とは、このことだろうか。
 
 
 以下は証拠写真である。
 
 
 しばしご飯場所を逍遥した後、キャットタワーに登ったヨメに、何とか食べてほしい一心で、おかゆの皿を置いた家主。
 ヨメは、やはり食べなかった。
 後から現れた盗っ人は、この際、なりふりなんか構っちゃいられない、と言わんばかり。何と、立ち食いを始めたものである。
 
 

 
 
 見よ、この真剣な表情を。
 
 

 
  
 そして、いい加減食べつくした段階で、体勢を変えた方が食べやすいということに、遅ればせながら気が付いたらしい。
 
 

 
  
 どうせなら、もうちょっと早く気がついても良かったんじゃないだろうか。
  
 
 ま、それでも。
 何年かぶりに、「三時のおやつ」にありついたダメちゃん。
 キミにとっては、今日はいい日だったね。
 せいぜい、よい夢を見てください。
  
  
 
  
  
  
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 ところで。
 先日の、ダメちゃんの長〜い背中の写真であるが。
 天竜さんとヨシハル♀にこの写真を見せたところ、
「皿の中には、何が入っていたんですか?」
という質問を受けた。
「いや、空だけど。」
と、答えたところ…
「こんなに努力して頑張っているのに、結局、空っぽなあたりが、実にダメちゃんらしい」、と。
 いやはや、まったくもって、そのとおり。
 理解の深い人たちではある。