ダメ隊長の地球防衛戦記 第八話:勇者の孤独

 
 一方、地球人たちの間では、エイリアンに対する警戒感が次第に薄まりつつあった。
 エイリアンは、地球人に対し、決して牙を剥くようなことはしない。鋭い爪を巧みに隠し、あくまでも友好的な態度を装い続けている。体格の華奢に見えることも幸いして、地球人の間では、エイリアンとの共存を是とする意見が、主流となりつつあった。
 これは、エイリアンとの出口の見えぬ戦いを続ける隊長にとっては、完全な逆風であった。既に巷では、隊長の戦いは彼の個人的なエイリアン嫌悪の情によるものに過ぎず、かえって地球の平和を乱すものだとする批判が、公然と囁かれている。そして、ついにその日は来た。上層部がやんわりと、だが確かに、彼にこう告げたのだ。
 
「ダメちゃん、ムムは君のこと、大好きみたいよ。」 
 
 呆然とする隊長。しかも、追い討ちをかけるように、エイリアンは、誰一人想像もしなかったような凄まじい攻撃を、隊長に仕掛けてきたのだ。名付けて、ちゅばちゅば・もみもみ攻撃!
 既に生後三ヶ月を経過しているはずのエイリアンが、屈強の成猫男子である隊長に対し、このような戦法を用いてくるとは…。
 停戦を画策する上層部は、暗に無抵抗を示唆してくる。だが、よりによってちゅばちゅばとは…何という屈辱であろうか。
 人々は誤解している。隊長は本当は至って温厚な、平和とメシと昼寝を愛する男なのだ。そんなささやかな幸せを守るため、こうして体を張って戦ってきた。彼だって、戦いたくはない。だが、敵はちゅばちゅばだ。敵のちゅばちゅばを、俺はただこうして、甘んじて受け入れざるを得ないのか…ああ、どうなってしまうのだ、俺の男としてのプライドは…。
 
 隊長の苦悩は続く。
 
 
 

(2009年8月6日撮影)