新猫問題の行方
ああ、もう。
脳味噌から溶岩が噴き出しそうだ。
頭の中は猫でいっぱい。猫、猫、猫…
どこにいても、何をしていても、心はひたすら、山梨と安暖邸に飛ぶ。
我が家の猫はどこにいるのか。そして、誰なのか…。
我が家のXデーは、来る21日…のはずであった。
そして、今日は19日。その19日も、あとわずかで終わる。
だが、肝心の新猫は、まだ影もカタチもない。
正直、もう、21日のデビューは無理だと腹をくくった。
かねてより、私は職場で、21日〜22日の休暇を宣言している。だが、その休暇もキャンセルすることになろう。
幸い、私が何のために5連休を設定していたのかは、割に知れ渡っている。だから、突然の予定変更の理由を尋ねられても、
「猫が来ません。」
と、ひとこと言いさえすれば、多くを語る必要はない。それだけが救いだ。
せいぜい
「じゃあ、いつ?」
と、尋ねられる程度だろうが、それにしたって、
「ワカリマセン」
としか、答えようがない。
というより。
もう、疲れてきた。
どうでもよくなってきた。
すでに、溶岩は固まって、辺りは不毛の大地と化しつつある。猫山家の新猫問題は、早くも、不活化の様相を帯びているのだ。
今日は、その経過報告のために、ブログを書いている。
10日の記事に書いたように、私の山猫姫妄想はあっけなく立ち消え、その時点で、最高位につけていたのは「キグルミくん」であった。
だが、キグルミくんを迎える決心がイマイチつかず、やっぱり山梨に行こう、と、週末の時点でいったん決めたことは、既述のとおりである。
そこで、
「やっぱり山梨に行く」
という趣旨のメールを、月曜朝に、友人さくらに送った。
しかし、このとき、私の心中に、微妙な変化が起こっていた。
何だか妙に、キグルミくんが惜しくなってきたのである。
そもそも、冷静に考えれば、キグルミくん以上の条件の猫なんて、なかなかいないのだ。
さくらへのメールにも、少しだけそのことを書いたのだが、長い付き合いの彼女は、その辺りは的確に見抜いたらしい。
「キグルミくんをお迎えするべきではないか」
という返事が返ってきた。
ダメちゃんとキグルミくん。実にしっくりくる、と。
山梨に行ったところで、滞在時間から考えると、それで結論を出すのは厳しいのではないか。それよりは、最初から安暖邸にキグルミくんを迎えに行った方がいいと思う、という意見であった。
彼女の意見は、キグルミくんに傾きつつあった私の気持ちに、いわば裏付けを与えた。というより、諸々の個人的な事情から山梨行きにためらいを残していた私に、「山梨に行かない」理由を与えることになった。
やっぱり、やめようか。
しかし、ブログでもオフでも、山梨行きを高らかに宣言してしまった後である。
そんなこんなで。
丸一日考えて、出した結論は、
「今週中に、もう一度、安暖邸に行ってみる」
だった。
今度は、さくらに同行してもらおう。
彼女の予定を無理矢理空けてもらい、当日の朝、Yuuさんにメールを入れた。
「今日、安暖邸に行って、キグルミくんに会ってきます。それで、心が決められたら、21日にキグルミくんをお迎えします。」
が。
何と。
返ってきた返事は――
「ごめんなさい。キグルミはトライアルが決まりました。」
・・・・・・
さすがに、メールを読みつつ絶句した。
いや、いいんだけど。
キグルミくんの幸せを、素直にお祝いしますけど。
しかしまあ、今回はなぜ、こうも縁がないのか。
話は四たび、振り出しに戻った。
Yuuさんも、さすがに同情してくれたのか、
「近々、また数匹、山梨から安暖邸に搬送しますから」
と、言ってくださった。
その中に、ダメちゃんに合いそうな子も含めていただけることを期待して、待つことにした。
Yuuさんには、よろしくおねがいします、とお返事して、さくらには緊急連絡。
安暖邸に新しい仔猫たちが来た時点で、一緒に見に行ってほしい、と。
翌日、さくらと食事をして、散々慰めてもらった。
「きっといい子がくるよ。」と。
と、いうわけで。
現在、「待ち」なのである。
が。
この一連の話をすると、聞く人によって、意見は分かれてくる。
「もう、ダメちゃんと二人暮らしにしちゃった方がいいんじゃないの?」
という意見も、ちらほらと出てくるのだ。
怖いことに、私も何だか、そんな気分が頭をかすめるようになっている。そして、その頻度が、じわり、じわりと、上がりつつある。
ビーズクッションの上でいい気分で寝ているダメに顔をくっつけながら、やっぱり水入らずの生活の方がいいのかなあ、などと、真剣に考えてしまったりもする。
彼自身は、むしろそちらを望んでいるのかもしれない。
ヨメがいたときには、そんなことは、考えもしなかった。
そのくらい、二匹は仲が良かったのだ。
新しい猫が来たら、ダメとその子は、あんなふうに仲良しになるのだろうか。そうなってもらうために、今、必死に新しい相棒を探しているわけなのだが、亡きヨメの心中を考えると、いたたまれない気もする。それはもちろん、人間の感傷に過ぎないのだけれど。
いったんそういうことを考え出すと、早い話が、もう面倒になってしまうのである。
何事もしばらく続けば定着するものだ。我が家も、人間一人・猫一匹体制が、しっかり定着しつつある。そして、定着した現状は、敢えて変えないのが一番ラクな方法には違いない。
やっぱり、物事は勢いだ。勢いが止まると、ナマケモノの私は、もう何もしなくなってしまう。信念も大義名分もへったくれもない。このまま溶岩が冷却したら、多分、もう、私は何の努力もしないだろう。ついでに、ブログもネタ切れで閉鎖――ということにさえなりかねない。
ああ、もう。
とにかく、どちらでもいいから、結論が出てほしい。
論点は「どの猫を迎えるべきか」から、「新しい猫を迎えるべきか否か」にまで、戻ってしまおうとしているのだ。
「待ち」は辛い。ついでに、休暇の予定が立たないのも辛い。
と、まあ。
グダグダいいながら、21日新猫デビューの話は、とりあえず流れました、というご報告でした。
先のことは、神のみぞ知る。