凶悪化する少年非行



 
 
 「Cats安暖邸」では、キーゴちゃんの「取ってこい遊び」が話題だという。
 Yuuさんのブログから動画を見たが、確かに、玩具を投げてやると、一目散に走って行って、咥えて戻って来ては、人間の膝の上に落とす。猫としては凄い技である。
 実は、うちのアタゴロウも、似たようなことをする。
 といっても、似ているだけで、似て非なるものである。
 何が違うって。
 最も大きな違いは、「それが遊びではない」ということである。
 家主的には、奴と遊んでやっているつもりは、これっぽっちもないのだ。故に、楽しくなんぞない。むしろ腹が立つ。
 であるから。
 キーゴちゃんの「取ってこい遊び」に対し、これを題して、
 
 
 アタゴくんの「取ってくるな!(怒)」 
 
  
 低血圧の家主は、朝、目覚ましが鳴って目が覚めても、起き上がることができず、長いこと布団の中で煩悶しているのが常である。
 その苦闘のさ中、掛け布団の上で走り回る奴がいるのだ。
 やっとこさ、起き上がって見てみると…
 アタゴロウ少年が、布団の上にジャラシを運んで来て戯れているのである。
 
 

  
  
 鬱陶しいので、遠くに追い払おうと、ジャラシを取り上げて放り投げると――。
 
 
 一目散に追いかけて行き、
 
 

 
  
 咥えて戻って来る。
 
 

  
  
 そして、また、掛け布団の上で遊び始める。
 
 

   
  
 取って来なくていいから。
 そう、言い聞かせて、またジャラシを放り投げると――。
 
 
 また追いかけて行って、その場でひとしきり遊び、
 
 

 
   
 再び、咥えて戻って来る。
  
  

 
 
 だから、取って来なくていいんだってば! 
 
 ムッとしながら、また取り上げて、三たび、放り投げると――。
 
 
 全速力で後を追いかけ、
 
 

 
   
 全速力で咥えて戻って来る。
  
  

   
 
 取って来るなって言ってんだよ!!
 喧嘩売っとんのか、このガキ。 
 
 

 
  
 というわけで、朝からムカつくガキなのである。
 
 

 
 
 …ハイ。
 すみません。
 
  

 
  
 そう。
 我が家には、「褒めて伸ばす」なんていう教育方針は、存在しないの。
 私には、キミの才能を開花させて、広い世界にはばたかせようなんて気持ちは、さらさらない。キミは一生、ここで飼い殺しだから、そのつもりで。
 
 

  
  
 こうして、将来の展望を持てなくなった少年は、やり場のない不満の吐け口を、反社会的行動に求めるようになる。
 
 

  
 
 オヤジ狩りである。
 しかし、我が家に、オヤジは彼しかいない。
 たまりかねたダメちゃんは、ついに、禁じ手に訴えた。
 分身の術を使って、自らのミニチュアを出現させたのである。
  
 

  
  
 少年は、マイクロ大治郎が気に行ったらしい。
 その後しばらく、広場を走り回って騒ぐ彼等の姿が見受けられた。
 
 

 
 

  
  
 が。
 
 
 あるとき突然、マイクロ大治郎は姿を消した。
 そして――
 
 
 翌朝、身元不明の遺体の一部が、民家の畳の上で発見された。
 
 

  
  
 鑑定の結果、DNAの型が、猫山大治郎氏と一致することが判明した。
 しかし、大治郎氏に怪我はなく、彼は一貫して、事件との関わりを否定し続けている。
 
 
 その後、アタゴロウ少年は、盗品を所持しているところを見つかり補導された。
(ちなみに、盗品とは家主のリップクリームである。)
 
 
 
 マイクロ大治郎の行方は、誰も知らない。