仕事の極意

 最近、我が家の藤吉郎が、代替わりした。
 私がお風呂から上がると、足ふきマットの上には若いモンがいて、ベテランは離れた所から、二代目の仕事を見守っている。
 雇主としては、仕事をしてくれるのはどっちでもいい。
 基本的には。
 

 が。
 ここ数日に関して言えば、私は二代目の仕事に、大いに不満を抱いている。
 融通が利かなすぎる。
 真面目一辺倒では良い仕事はできない、ということを、彼女は学ぶべきである。


 初代藤吉郎は、季節労働者であった。
 冬場は働き、夏場は冷たい床の上でサボっていた。
 が、今にして思えば、彼はプロであった。
 二代目は、ひたすら働く。
 暑い夏も、サボることがない。真面目である。


 暑い夏の夜。
 風呂上がりで火照った足を、足ふきマットに乗せる。
 生温かい。
 不快だ。


「夏はやらなくてよい」ということを、なぜ初代は二代目に伝えなかったのであろうか。
 仕事の極意とは、盗むものだから!?
 

 やめてくれ。
 引き継ぎ、悪過ぎ。


 ま、確かに、二代目はかっぱらいが得意だけどさ。





(達人近影)