山田の猫

 はじめに。
 5日〜6日にかけて、覗きに来てくれた方へ。
 大変、失礼をばいたしました。
 上と同じタイトルで書きはじめたものの、途中で睡魔に襲われ、やむをえず断念。が、半端に更新されていたことに、気付いていなかったのでした。
 ??? と思われたことでしょう。
 別に、秘密のメッセージではありませんでした。 
 私もダメちゃんも、多分ヨメも、「チョウホウカツドウ」や「マヤクトリヒキ」に関わっているわけではありません。
 単なる根性無しです。すみません。


 で、次からが本文です。




 写真は、我が家に来る前、リトルキャッツさんで保護されていた時分の、ヨメとその兄弟猫。 
 私が先日、「ヨメがリトルキャッツさんに保護されるまでの経緯を知らない」と書いたことを気にかけてくれたのか、代表のyuuさんが、ヨメの出自に関する情報と共に、送ってくださったものである。
 見てのとおり、兄弟猫は全員、シルバーの綺麗な仔猫ちゃんである。母猫も同様に、シルバーの美女猫であるそうだ。
 美猫ファミリーの中で、ただ一匹の雑巾猫。しかも、顔立ちもイマイチ。
 当時、関係者の間でも、「何で一匹だけこうなの?」という感じだったらしい。
 笑える話である。
 いかにも、ウチのヨメらしい。


 そのメールを読んだ時、私の頭に最初に浮かんだのは
みにくいアヒルの子
 という言葉だった。
 だが、「みにくいアヒルの子」は、成長して美しい白鳥になる、という話である。大人になってもイマイチなうちのヨメは、これには当てはまらないと思われる。


 次に考えついたのは「一族全員医者の家系で、一人だけミュージシャンになりたいと言い出す三男坊」(もしくは、姉たちは全員権門に嫁いでいるのに、一人だけ貧乏文士のところに行きたいと言い出す四女)であった。
(※この場合、三男の音楽的才能もしくは貧乏文士の文才は、概してアマチュアに毛が生えた程度のレベルであるのが常である。)
 しかし、これも違う。
 ヨメの場合、問題になるのはあくまで容姿であって、精神や生き方の問題ではないのである。


 うーん。


 何か他になかっただろうか。似たような話が。


 そして。
 最終的にたどり着いたのが、佐々木倫子さん(「動物のお医者さん」の作者です)の漫画、「忘却シリーズ」の中の一篇「山田の猫」である。
 山田さんは美人画を得意とする日本画家。あるとき、彼の恩師の家で仔猫が5匹生まれ、彼はうち1匹をもらうことになった。彼の理想は「和服の似合う妻と美しい日本猫」。白黒の仔猫を希望して恩師宅に出向いたものの、4匹もいた可愛い白黒仔猫の中から1匹を選ぶことができず、結局、もらったのは、唯一いた三毛猫。ところが、その三毛は、史上稀にみるブス猫で…
 という話。


 うんうん。
 これは、かなり近い。というより、同じく猫の話だし、むしろ近すぎるくらいだ。
 もっとも、私は、最初からサビを希望していたので、山田さんのように、「選べなくなった」という状況ではないのだが。


 ただし、山田さんは、こうも言う。
「私のこういう性格を、恩師はよくのみこんでいるというのか、たとえていうなら、ババ抜きで、迷って考えぬいてカードをひくのだが、必ずババをひかされている、そんな感じなんだな。」
 うーん、これは…


 ある意味、この点、うちのヨメに近いような気がする。
 つまり、私のヘソ曲がりな性格をよく承知した上で、yuuさんは私にこいつを紹介したのではないか、という疑いがあるのだ。


 まあ、ね。
 私がサビ猫を希望したのは事実だし。
 すぐに懐かない猫がいいです、と言ったのも、事実。
 そして、リトルキャッツさんに協力する意味もあって、売れ残りそうな猫を引き受けよう、と思っていたのも事実なので、別に、騙されたというわけではないのだけれど。


 ちなみに、私が「懐かない猫」を敢えて希望したのには、理由がある。
 うちには、私を死ぬほど愛している、ストーカー猫のダメがいる。
 こいつは気が弱くて、猫同士の競争になったら、戦う前から不戦敗するタイプである。が、同時に、自分より明らかに弱い猫に対しては、実は卑屈な弱い者いじめの傾向があるのだ。(何気にヤなやつですね。) 
 今、スリベタの仔猫をもらってしまったら…。
 いずれにしても、猫同士の関係がややこしくなることは、目に見えている。
 だったら、猫同士がお互いの存在に慣れるまで、新猫は、私に懐かない方がいい、という理屈である。


 結果的にいえば、この作戦は成功であった。
 ヨメは私に懐くより早く、ダメに懐いた。そして、ヨメが私から逃げている間、私は気兼ねなく、ダメをべったり可愛がることができた。
 これから二匹目を迎えたいと考えている方には、ぜひお勧めしたい方法である。


 現在、ヨメは、まあ一応、私に懐いたらしい。
 見た目の方は、相変わらずイマイチだが、見慣れれば、それなりに(角度によっては)可愛く見えることもある。
 私としても、乗っちゃいけないところに乗ることと、入っちゃいけないところに入ることと、家具や寝具を破壊することと、壁紙を剥がすことと、花瓶の花をバラまくことと、押入れから服を勝手に引っ張り出してくることと、爪を切らせないことと、抱っこを拒否することと、食事にいちゃもんをつけることと、パソコンの上を走ることと、机の上の紙類を落としてバラバラにしちゃうことと、細かいものを何でもラグの下に蹴りこんでしまうことと、吸気口のフィルターを引っ張って外してしまうことと、早朝に暴走して雄叫びを上げることと、お客様の相手をしないことのほかに、このヨメに特に不満はない。
(これだけあれば十分だという気もするが。)
 

 あ、でも。
 ババをひかされた(?)ことは事実であるが、yuuさんが「私の性格を承知した上で企んだ」とするのは、やはり冤罪であろうと思う。
 もし、そこまで考えていたなら、上記の写真は、お見合いの前に私の元に届いていたはずである。
 そして、「この子の兄弟は、全員美猫です。」と、真っ先に聞かされていたに違いないもの。


 ね、yuuさん。