うちの子になりました

 

 
  
 ハイ。ひねってません。(笑)
 
 
 安暖邸でのお見合いでトライアルを決めた後、仔猫の名前を何にするか、友人さくらと話し合った。
「あたるくんがいいんじゃない?諸星あたるのあたる。」
「えーっ。やだよ。」
 だが、その瞬間、
(確かに、「あたる」ってカンジの顔かも…)
と、実は内心、納得してしまった私である。
「じゃあ、“あたろう”は?」
「あたろう、って言うと、こっこを思い出すわねぇ…。」
 本人の承諾を得ずにバラすのだが、友人こっこは子どものころ、「たきび」の歌の
 〜あたろうか、あたろうよ〜
という歌詞の意味を、勝手に、「あたろう」が人名だと解釈して、
「あれは、あたろうかい?」
「そうだよ、あたろうだよ。」
という会話だと思っていたという、世にも珍しい勘違いをしていた人である。
 私自身が事前に考えていた名前は、「大五郎」(そして、ダメを“ちゃん”と呼ばせる)か、イケメン猫だったら「粂八」であった。
 だが、どちらもイマイチ、ピンとこない。
「じゃあ、アタゴくんのままでいいんじゃない?可愛いよ、アタゴくんて。」
 確かに、アタゴでも悪くはないんだけど。でも、男の子には、ダメちゃんと揃えて日本男児らしい名前をつけたいと思っていた。
「分かった。アタゴロウにする。」
 単に、大治郎と脚韻を踏んでみたまでのことである。
 
 
 話の順序を間違えたかもしれない。
 昨夜、Yuuさんに、「アタゴをうちの子にします」というメールを送った。
 誓約書ほかの事務手続きはこれからなのだが、もう公表してもいい、とお許しをいただいたので、ここに発表させていただいた次第である。
 Yuuさんからのお返事には、
「それらしい名前をつけてやってください」
と、あったので、予定どおり、「愛宕朗」と命名した。「それらしい」ことについては、この上ないと、自負している。
 リトルキャッツさんでつけている仮名には、こう申し上げては失礼かもしれないが、たいへん凝ったおしゃれな、あるいは可愛い名前と、割と安直につけたなとすぐ分かる名前があるような気がする。アタゴなんぞは、ひと目で由来が分かる名前で、深く考えられていない(失礼!)ことが明らかなあたりが、この残念猫にぴったりである。
 先日、母と姉が遊びに来た際に、仔猫の名前を訊かれ、まだつけてない、と言うと、
「仮の名前があるでしょ。」
と、そこまで突っ込まれたので、「愛宕山で保護されたからアタゴ」と教えた。
 それを聞いて母は、
「あら、ランちゃんと同じねえ。」
と、喜んでいた。
 ちなみに、ランちゃんとは、りりの幼名で、やはりリトルキャッツさんで保護された時、カラスに追われて笛吹川の欄干を走っていたから「ラン」なのであった。
 何だか知らないけど、母を喜ばせて、ちょっと親孝行したような気分にもなっている。
 
 

  
 
 風邪が完治しないのに薬が終わってしまったので、今日、アタ坊を、動物病院に連れて行った。
 事前に電話で先生に相談し、連れて行った方がいいですか?と尋ねると、
「体重を測りたいから、連れてきてください。」
と、言われた。
 現在の状況を電話口で説明しているとき、
「大きくなりましたか?」
と訊かれ、一瞬、答えに詰まった。
 実は、まさに今朝、
(ちょっと大きくなったみたい…)
という気が、ふとしたのである。だが、たった一週間のことだし、まあ、こいつが環境に慣れて元気に活動し始めたからだろう、と、単なる気のせいとして片付けていたのであった。
 果たして。
 動物病院に着いて、アタ坊を診察台に乗せると、先生と助手さんたちが口をそろえて、
「あら、大きくなったわね。」
と、言った。
 実際、体重も、前回の950gから1100gに増えていた。
「太ったし、毛ヅヤも良くなったわね。」
 本当に、仔猫って、すぐ大きくなるんだなあ。
 結局、さらに8日分、飲み薬と点鼻薬をいただいた。
「名前、決めた?」
「ハイ、決めました。愛宕朗です。」
「アタゴロウくん。それじゃ、あっちゃんね。」
 そうか。アタゴロウは“あっちゃん”になるのか。(褒めすぎな気もするが。)
 愛宕朗の朗は「朗らか」である、と、言おうと思っていたのだが、そもそも「字は?」と訊かれなかったので、つい、言いそびれた。
 薬の袋には、「あたごろうちゃん」と書かれていた。
 そう言えば、大治郎の治が政治の治であるということも、7年間、言いそびれている。ミミさんの正式名が「三冬」であることも、結局、言えないままだった。
 まあ、いいか。
 愛宕朗は、動物病院では「あっちゃん」で、大治郎は「だいちゃん」ということだ。
 ついでに言えば、大治郎の愛称が「ダメちゃん」であることも、7年間、言いそびれたままである。
 
 
 そんなわけで、愛宕朗くんの命名披露も、何となく終わってしまった感じである。
 あと、決まっていないのは、猫山家における彼の位置付けなのだが、その点については、やはり、大治郎氏の意向を聞く必要があるだろう。
 
 
 どうだろう、ダメちゃん。愛宕朗を君の養子に迎える気はないかね?
 
 

 

 

 
  
 分かったよ。してこい!!
 
 
 

 

 

 

 
   
  
 そんなわけで、養子問題については、当面、ペンディング中である。
 
 
 ところで、その、ダメちゃんとアタ坊であるが。
 アタ坊が活発になるにつれ、「遊び」の場面も増えてきたのだが、さすがにダメちゃんも、ヨメの時と違って、「遊ばせてやってる」という、大人の貫録を崩さずにいた。
 アタ坊が挑発しても、適当にいなして、クールに応じている。
 それが、今日、二匹がキャットタワーの上下でやり合っているのを目にした。
 
 

 

  
  
 思わずカメラを持ち出したのだが、私が写真を撮っていることに気付くと、大治郎くん、とたんに攻撃をやめ、ポーカーフェイスを気取って見せたものである。
 
 

  
 
 ガキんちょ相手に、つい本気になったところを見られたのが、口惜しかったのか。
 いや、もしかしたら彼は、保父キャラではなく、あくまでダンディなナイスミドルでいたいのかもしれない。
 
 
 養子問題の決着は、相当先になりそうである。