ゴロツキ


  
 テレビをつけていたら、海老蔵さんの奥さん小林麻央ちゃんが、
「夫婦共々、深く反省しております。」
と、深々と頭を下げているのが、目に入った。
 今回の一件、視聴者には結局何だかよく分からないが、とりあえず、
(麻央ちゃん、可哀想に…)
と、感じているのは、私だけではないだろう。
 海老蔵さんはともかく、麻央ちゃん、あなたは何を反省するの?
 こんな男とケッコンしたことを反省してます、だったりして。
 などと、つい、意地悪なことを考えてしまった私である。
 ごめんね、麻央ちゃん。


 と、ここまでは、猫とは全く関係のない話。
 以下が本題です。


 毎日、私が帰宅すると、ダメは玄関に突進していって、たたきの上でゴロゴロする。
 家主に撫でる隙さえ与えない、猛烈なスタートダッシュで。
 こんなふうに、玄関のたたきが好きな猫って結構いると思うが、一体、なぜなのだろう。
 冷たくて固いところで転がりたいなら、なぜ、風呂場のタイルの上ではゴロゴロしないのか。
 それに、特にダメについていえば、それをやるのは、私が外から帰ってきた時限定なのである。
 それ以外の時は、玄関先に行こうともしない。行ったとしても、たたきに降りてみるだけで、さっさと戻ってくる。足の裏が冷たくてイヤだな、とでも言いたげな様子で。


 なぜ、帰宅時だけ?
 人間が外出先から持ち帰るものに、興味があるのか。
 それは、外の世界への憧れの一端なのだろうか。
 熱心にゴロゴロ転がるそのさまは、開いたドアからさっと吹き込んで、玄関たたきの上に散らばる何かを、毛皮に吸収しようとでもしているかのように見える。


 でも。
 帰宅した人間とともに、玄関に吹き込むものって。
 春なら花粉とか、ホコリとか、ウィルスとか…!?


 何だか、それってひどく自虐的な行為に思えてきた。


 汚いものや悪いものから完全に守られているからこそ、外の世界のそういったものに強く魅かれる。
 悪徳の抗いがたい魅惑。
 父親がうっかり持ち帰った成人雑誌を、むさぼるように読みふける少年。
 いや、そのくらいなら可愛い。
 良家のお坊ちゃんが、こっそり悪い連中と付き合ってみたり、怪しげな店に出入りしてみたり…


 れれれ!?
 何だか、どこかで聞いたような話になってきたぞ。


 猫に話を戻そう。
 室内飼いの猫は、外の世界に強く興味を示す。
 ガラス越しに、長いこと外を眺めていたり。
 ガラス窓を開ければ、あっという間に網戸に寄り、寒かろうと暑かろうと、ひたすら外の空気を嗅いでいたりする。
 決して外猫になりたいわけではないのだけれど。
 それは、猫としての性、つまり本能の命じるところなのだろうと思う。


 飼いならされたペットであるより、野生のケモノでありたい。
 そんな欲求を、誰もがひそかに隠し持つのだろうか。
 人も猫も。
 それが、一歩間違えば破滅につながると分かっていても。


 でも、保護者としては、悪徳の世界に深入りすることだけはやめて欲しいと思う。
 ダメちゃん、キミだって顔が命、なんだからね。
 
 
 

サビ猫は、速い…。