テロとの闘い
近頃、相次いで報告される、破壊活動の痕跡。
籐製猫ベッドの屋根部分。
押入れのふすま。
と、内部。
そして、吸気口フィルター。
オイコラ、誰だぁ〜!!
と、一応叫んでみたものの、すでにその時、私の中で犯人は確定していた。
証拠?
そんなものは不要だ。
当局はただ粛々と、危険分子を排除するのみである。
なーんて、罰ゲームをやったつもりはないのだが。
そういえば、最近、こんなことがあった。
寝入りばな、やけに猫がうるさい。
いつまでもいつまでも、ニャーニャー騒いでいる。
やかましいぞ、静かにせい…と思いながら、とろとろと寝入ったのだが。
あまりのやかましさに、目が覚めた。
目が覚めると、用を足したくなるのが人間の性。
そこで、起き上がってレストルームヘ。
戻ってきてから点呼をとると…
あれ!? 一匹足りない。
もしや、と思って、リビングと玄関の間のドアを開けてみると。
ヨメが凄い勢いで駆けこんできた。
まるで、頭から突撃をかけるかのような。こちらが一瞬、ひるむくらいの、必死のスピードであった。
今にして思えば。
あのとき、私は最初からヨメを玄関に閉め出していたのかもしれない。
猫がやかましかったのは、多分、そのせい。
そういえば、ずいぶん前になるが、私の隙を衝いてトイレに走り込んだダメを、気付かずに雪隠詰めにしたまま寝ようとしてしまったことがあった。そのときは、ミミさんが鳴いて起こしてくれたのだったっけ。
今回、閉め出されたのがどちらで、鳴いていたのがどちらかは判然としない。が、おそらく、閉め出されていたのはヨメの方であろう。
走り込んできた時の、あの勢いが全てを物語っている。
だったら、私がレストルームに行くために扉を出入りした時に、走り込めば良かったのではないか、と、その辺が微妙なのだが。
そうか。
あのとき、警備を突破させ、危険分子を帝都に侵入させたのが、そもそもの失策であったのだ。
以来、危険分子は当局に靡く様子を装いつつ、水面下で破壊活動を繰り広げている。
だが、国際世論は、和平を要求している。
当局としてはやむなく、穏健派の長老に仲介を要請しているのだが、彼は穏健派すぎて無能である。(やる気がないとも言う。)
帝都の治安回復の見込みは、未だ立っていない…。
潜伏する危険分子