「今年の目標」

 

 
 
 昨日の話で恐縮であるが。
 昨日は、初詣&新年会デーであった。
 午後から毎年恒例の神田明神さんにお参りし、その後、我が家でなべ。
 ちなみに、新年会は、先日見合わせとなったクリスマスパーティの代わりである。
 
 
 まずは、猫には関係ないのだが、神田明神さんのご報告。
 いやいや、繁盛してました。
 こんな感じ。
 
 

  
  
 神田明神さんは「商売の神様」(?)と言われるが、なるほど、この盛況ぶりを見れば、商売繁盛にも実にご利益がありそうだ。
 肌のおそろしくキレイなお姉さんが、化粧品を対面販売しているようなものである。
 それにしても、お参りの列に並んでいると、予想に反して、前に行くに従って列の幅が広くなる。何しろ、係の方が「もっと広がってください」と呼びかけているのである。
 普通は逆だよね?と、ちょっと訝しく思いながら進んでいくと、社殿の前に、巨大なお賽銭箱が据えてあるのが目に入った。
 なるほど。
 つまり、賽銭箱の幅くらいまでは広がってほしいというわけだ。
 で。
 列が進んで、その賽銭箱が見えてくると、気の早い江戸っ子の皆さんが、前にいる参拝者の頭越しに、お賽銭を投げ込んでくる。
 何も、そんなに遠くから投げなくても、と、つい思ってしまう。
 もうちょっと待てば近くに来るのに。
 と、そこで気が付いた。
 神田明神さんは、銭形平次ゆかりの神社なのだった。
 
 
 以上は、全然猫に関係のない話なのであるが。
 なお、今年は、神田明神さんにも「ペットのお守り」があった。
 ただし、小さなお守りがチョーカー風になったもの。おそらく、中型犬以上の首につけるものであろう。少なくとも、私が見た範囲には、猫サイズのものはなかった。
 猫は商売にならないわけか。
 そりゃそうだよね。洋の東西を問わず、商人は勤勉と倹約が身上。猫にはそのどちらもない。
 
 
 で。
 続いて、新年会と相成るわけである。
 
 
 結局、今回我が家に来たのは、クリスマスイブの日に私たちが訪ねて行った、やっちーのお姉ちゃんことA子と、うちでクリスマスなべを一緒に食べたB子の、二人であった。
 つまり、クリスマスと同じ面子である。
 と、ここまで書けば察しはつくだろうが、我々のつるみ度は、やたらと高い。かなり頻繁に顔を合わせる間柄だと思うのだが、その会合が「家で」ということになると、いちばん会場になりやすいのが我が家である。単純に、地理的に真ん中にあるからだ。
 となると。
 うちの猫どもにとって、この人たちは、家主の次くらいに身近な人間となる…はずである。
 なのに。
 うちの猫どもときたら、全く、接客体質じゃないのよね。
 知らない・馴染みのない人間に対し、人見知りするのは分かる。
 だが、こいつらの場合。
 ダメは、知っている人間でも、すぐ見忘れる。(訪ねてくるたびに「この人、何だか見たことがあるけど…」と、不審げな眼差しで遠巻きに眺めている。)
 ヨメは、知っている人間でも、警戒してニンジャ化する。(忍者の足さばきで、物陰から物蔭へダッシュして移動しつつ、見え隠れに人間どもを見張っている。)
 そんなわけで。
 我が家に訪ねてくる人は、家族にしろ友人にしろ、ほぼ例外なく猫好きであるのに、こいつらは、お客様をがっかりさせることについて、まず期待を裏切らない。
 特に、実家の人間には、その辺が明らかに評判悪い。 
 一方で、実家のななとりりは、私がたまに帰ると、ちゃんと家族として迎えてくれるのだから、まあ、我が人間家族には納得がいかなくて当然であろう。
「アタマ悪いんじゃないの!?」
と、体操のお姉さん(我が姉)に悪態をつかれても、家主には返す言葉がないのだ。
 
 
 が。
 今回は、二匹とも進歩がみられたのである。
 まず、ヨメ。
 隠れなかった。
 人間のなべの支度をする間に、A子に猫飯を出してもらったのだが、それも3分の2まではつつがなく食べた。
 その後も、だいたいずっと、見えるところにいた。
 お客様のいる前で、私に頭を撫でさせた。
 すごいことである。
 そして。
 友人たちは、後半、座っているヨメを撫でた。
 ヨメは、大人しく撫でられていた。
 ものすごいことである。
 そんなことを「ものすごい」と言わなければならないのも、何か、ちと情けない気もするが、私以外の人間には見えない「幻の猫」と言われていたことを考えれば、大した進歩である。
 ちなみに、彼女は、お客様に「可愛い!」「美少女」(←?)と言われて、まんざらでもなさそうな顔をしていた。
 よかったね、ムムちゃん。
 でも、お客様の褒め言葉は、額面どおり受け取ってはいけないよ。何しろ、ほとんど自宅のように勝手知ったるとはいえ、彼女たちは一応、「お客様」なんだから。社交辞令という可能性も加味して考えなければね。
 
 
 で。
 特筆すべきは、ダメ。
 といっても、彼が、これまでも時々現れている人間二人を、見忘れていなかったわけではない。
 しばらくはやはり、胡散臭そうな目で人間どもを眺めていたのだが、私たちがなべを始めると、ほどなく近くにやってきた。
 そして。
 さきほど、夕御飯をくれた「やっちーのお姉ちゃん」の隣に、ずーっと寄り添っていたのである。
 いるだけではない。触り放題・触らせ放題。
 以下が証拠写真である。
 
 

 

   

 
 
 その後、ダメは何と、人間3人、全員の膝に乗った。
 全員といっても、私は無理やり膝に引っ張り上げたのであるが。だが、お客様2人の膝には、自主的に乗った。
 凄いサービスである。
 ただし、乗られた人間は、喜びつつも、
「重い。」
と、口をそろえて言っていたけれど。
 
 
 猫どもの、この、愛想の良さ。
 どうした風の吹きまわしだろう。
 でも、こいつぁ、春から縁起がいいや。
 うちの猫どもにも、ようやく、お客様をもてなそうという心意気が生じてきたのだ。
 
 
 なお、この話には続きがある。
 実は、昨夜台所で水仕事をしてくれたB子が腕時計を忘れ、今日、それを取りに来たのである。
 昨日の今日ではあるが、せっかく来てくれたので招じ入れて、わずかの時間、お茶を飲みつつ喋っていたのであるが。
 ダメは再び、自主的にB子の膝に乗った。
 昨夜、写真を撮らなかったので、以下は今日撮った、「お客様の膝の上のダメちゃん」スクープである。
 
 

 

  
  
 甘え放題。
 ただし、B子が家に入ってきた当初は、二匹とも、押入れを開けて潜り込んだ。
 昨日から15時間くらいしか経っていないのに。やはり、一度は忘れるらしい。
 ヨメについては、その後も、押入れからは出たものの、近くに寄ってはこなかった。
 やっぱり、まだまだ、である。
 
 
 以上を踏まえて、私が勝手に立てた、二匹の今年の目標。
 まず、ヨメ。
 お客様が来たときも、同じ部屋にいること。
 そして、一訪問につき一人一回以上、触らせること。
 そして、ダメ。
 知っている人が来たら、3分以内に思い出すこと。
 特に、体操のお姉さんのことは、2分以内に思い出すように。
 ダメちゃん、分かってる!?「史上最強のバカ猫」と呼ばれたキミの妹(りり)よりも、キミ、アタマが悪いって言われてるんだよ。
 この屈辱は、何としても、雪がねばなるまいに。
 
 
 と。猫に目標を立てたのだから、自分はどうなのさ?と訊かれそうだが。
 ま、そりゃそうだ。
 だが、目標を立てる前に、まず、自分の状況を客観的に把握することが必要と思われる。
 そういうわけで。
 初詣にて、おみくじをひいたものである。
 
 
 末吉。
 
 
 まあ、そう悪くはないか。これから良くなる、ということで。
 と、思ったのだが。
 おみくじ冒頭の文面。
「不幸な目に遭遇し悲嘆にくれ何の期待もなしに漫然と日を送る人。云々…」
 え、ええっ!?
 そ、そんなに悪かったのか…。(確かに、漫然と日を送ってはいるけど。)
 それじゃあ、手の施しようがないではないか。
 目標どころじゃない。
 おみくじは、「希望に燃ゆる春は目前」といっている。じゃあ、希望が燃え始めてから、目標を立てることにしよう。
 それまでは、今までどおり、漫然と日を送ることにした。
 
 
 ちなみに、おみくじによると、失せ物「低き所を探せ」だそうだ。
 そりゃそうだよね。うちの失せ物は、たいてい、ヨメがどこかに蹴り込んでいるのだから。