PCが帰ってきました。

 

 
   
 お陰様で、PCが本日、晴れて退院した。
 およそ1週間である。当初、2〜3週間と言われていたのだが、どうやら、方違えは必要なかったものと思われる。
 データは無事。ついでに、前回書くはずだった記事も一緒に退院してきたので、今日は、1週間遅れで、それを載せようと思う。
 本来は、9月22日に掲載するはずだった話。題して「チョイ悪中年男・その後」である。
 
 
***************
 
 
 前回、どこも悪くないのに病院に連れて行かれた「チョイ悪中年男」こと大治郎くんであるが。
 後日談がある。というより、できた。
 残念ながら、彼は翌日も病院に連れて行かれたのであった。
 そう。彼は、どこも悪くなく、なかったのである。
 
 
 さんまパーティが、金曜日。
 翌土曜日の夜ごはんが食べられず、熱を出したため、日曜日に病院へ。
 日曜日の朝ごはんは完食。病院での検温は平熱。
 が。
 結局、日曜日の夜ごはんからまた食べられなくなり、またしても熱を出した。
 彼にとって幸か不幸か、翌日は月曜日とはいえ、休日である。
 それゆえ彼は、前日と全く同様に、かんぶくろならぬペットキャリーに詰められて、朝っぱらから病院に連れて行かれることと相成ったわけである。
 
 
 その月曜日は、血液検査と、補液。
 血液検査は、翌日まで結果待ちである。
 食べないだけでなく、水も飲んでいないので、脱水対策として補液をしてもらった。そこに、吐き気止めの薬も加えていただいた。
 吐き気が止まれば、食べられるようになるかもしれない、という、淡い期待が込められていたわけであるが…。
 が。
 やっぱり、食べない。
 またたびも煮干し粉も駄目。ささみのゆで汁でさえ、においを嗅ぐだけでパス。
 血液検査の結果だけなら電話で知らせてもらえたのだが、結局、翌火曜日も、仕事を早引きして病院に連れて行かざるを得ないこととなった。
 通院3日目である。
 ありがたいことに、血液検査では何も出なかった。
 熱も下がっていた。
 その日も、補液と吐き気止めをしてもらう予定であったが、それに加え、
「レントゲンを撮りましょう。」
 お腹の中に異物がないか見るのと、加えて、肺に水が溜まっていないか、確認するためである。
 肺に水、とは、唐突な話のようであるが。
 何でそんな疑いをもたれたかと言うと、ダメが病院で、鼻をピクピクさせ、荒い息遣いをしていたからである。
「ちなみにこの子、病院から帰って来ると過呼吸になります。」
 私が申告すると、先生と助手さんたちは、やれやれ、と言わんばかりに苦笑いした。
 まあ、そんなわけで、息が上がっているのも、緊張のせいであろうとは思われるのだが、万一、ということを考えてくれたわけである。
 
 
 レントゲン室から診察室に帰ってきたダメは、いったん、キャリーケースに戻された。
「少し休ませましょう。」
と、先生。
 ダメは大人しく、キャリーの中にうずくまった。
 が。
 休ませる、ということは、次があるということで。
「もう一回頑張ってね。エコーをとるから。」
 もう帰れるのかと思いきや、再びキャリーから引っ張り出されたダメちゃん。
 診察台に乗せられ、何やらお腹に冷たいものを塗りつけられ。
 助手さん二人が、前足と後ろ足を押さえる。
 横寝の状態で、エコーの画面と向き合うダメは、自分のお腹の中を凝視しているようで可笑しかった。
 と。
「せーの。あおむけっ!!」
 助手さんたちに両手両足を掴まれ、いきなりひっくり返されるダメちゃん。
「あら、かわいい。」
 先生が思わず口にしたほど、突然のことに訳が分からず、目を丸くしてキョトンとしているダメは可愛かった。
 血液検査・レントゲン・エコーと、仰々しく検査されたダメは、さぞかしびっくりしたことであろうが、飼い主的には、ちょっと面白い体験であったことは否定しない。
 
 
 こうして、仰々しい検査を終えたダメちゃんであるが。
 結局。
「お腹にガスが溜まっていますね。腸が動いていない。だから、食べられないし、食べても吐いてしまうのでしょう。」
 レントゲンの写真を示しながら、先生が説明してくれた。
「ストレスでそうなる子もいるんですよ。」
 やっぱり、ストレスだったか。
 人間で言えば、事務方から突然、慣れない営業部門に回された中間管理職、といったところか。
 チョイ悪どころか、顧客にも上司にも部下にも気を遣いすぎて、精神的に疲れ果てた中年男、の方が正しいであろう。
 吐き気止めとともに、「お腹を動かす薬」を注射され、自宅で飲ませるようにと、「ガスモチン」なる錠剤を、4日分、処方された。
 帰りがけに、助手さんの一人が、こんな注意を与えてくれた。
「お薬が効くと、急にお腹が動き出すので、びっくりするかもしれません。あと、ウンチが出たり…」
 それから、ちょっと言いにくそうに、
「おならが出ると思います。」
 でも彼は猫だから、おならを遠慮することはないだろう。人間の中間管理職より、その点は恵まれているのである。
 
 
 その夜、彼が本当におならをしたのか、残念ながら、私には分からなかった。
 だが、お腹をうごかす薬は確実に効いたようで、翌日から少しずつ、ダメはごはんを食べるようになった。
 そして。
 最後の錠剤を投与した今日、彼は朝食も夕食も、一気食いで完食である。
 さらに、今現在も、もっとくれと催促しているのだが、食後、胃袋ポンポンでげっぷをしていたことを知っている私は、うかうかとその手には乗らない。
 せっかく、ガスのおかげで、長年の懸案であったダイエットを、一時的にでも達成したのだ。
 ついでに、蛇足ながら、同じく長年の懸案であった私の投薬技術の方も、今回の「ガスモチン」については、全戦全勝であったことを報告しておく。
 もっとも、これについては、とりあえず何とか口に入れた錠剤を、ダメの方が自主的に飲んでくれたような気配もあるのだが。
 
 
 それにしても。
 騒ぎが収まったところで、落ち着いて考えてみると――
 
 
 こいつ、メンタル弱すぎ。
 
 
 確かに、日常と違うことが2日続いた。
 だが、それって、そんなに凄い事件だったのか?
 
 ○ 家主が大量の猫の匂いをつけて帰ってきた → そんなの、Cats安暖邸に行けば、毎度のことだし。
 ○ 初対面の人が来た → いままでだって、時々あったこと。
 ○ 友人こっこが訪ねてきた → いい加減、彼女のことは覚えたでしょ。
 ○ サンマをもらった → 前にも食べたじゃない!
 
 ひとつひとつは、初めてでもないし、いつもなら、いちいち気にせずスルーしてしまうような、ごく小さなことなのだ。
 それが4つ続いただけで、発熱するほどのストレスになってしまうとは。
 弱い。弱すぎる。
 
 
 だがしかし。
 人間の目からは、「ささいなことがたったの4つ」でも、当事者の猫にとっては、もっと違う意味を持つのかもしれない。
 もう少し、ダメちゃんの側に引きつけて、一連の出来事を捉え返してみよう。
 
 ○ 家主が大量の猫の匂いをつけて帰ってきた → ダンナが、知らない女の香水(それも複数)を、プンプンさせて帰ってきたようなものか。
 ○ 初対面の人が来た → だが、その人からもやはり、知らない女の香水が、プンプン匂っている。
 ○ 友人こっこが訪ねてきた → いつもなら早い時間から、他の人と一緒に来るのに、なぜ遅い時間に彼女だけ?
 ○ サンマをもらった → いつもは絶対くれないのに。

 

  
  
 …へ?
  
   
 
  
   
 つまり、Sさんは女衒か!?
  
  

  
  

 
 

 
 
 えっ!そ、そこ?
 ダメちゃん、それ、論点ずれてない?
 
 

  
 
 いや、こっこは要らないって言ってるし。