アタ坊、収監中
なかなかきちんと更新できないので、とりあえず、現状報告を。
年が明けて、我が家の子になった愛宕朗くんであるが。
実は今、ムショ暮らしである。
猫カフェ荒らしのSさん曰く
「ハゲの刑で無期禁固」
愛宕朗が我が家に来たのが、12月29日。
風邪っぴきで、薬つきのトライアル開始であった。
翌30日に、我が家かかりつけの動物病院に連れて行ったのが、初診である。
それからしばらく、リトルさんからもらった薬で、風邪の治療が続いた。
年が明けて1月6日。再び動物病院へ。
リトルさんの薬がなくなったので、別の薬を出してもらう。
この頃か、もう少し前か。
アタ坊の耳に、カパカパしたものがついていることに、気がついた。
気付きはしたものの、当初はごく小さなものであったし、風邪っぴきの彼は常にハナミズを飛ばしていたので、何かのはずみで自分のハナミズが付いたのだろうと考えて、私は気にしていなかった。
それが、だんだん気になり始めた。
カパカパは、いつまでもはがれないし、落としてやろうと思っても、固まっていて剥がれない。それに、だんだん大きくなってきて、どうも耳全体が禿げてきたような気がする。
これは、ひょっとして…
(1月6日撮影)
1月9日。会社を早引きさせてもらい、動物病院に駆け込んだ。
「先生、真菌じゃないかと思うんです!」
先生は、アタ坊の耳のハゲを見て、
「ああ…それっぽいわね。」
人から聞いた話で、真菌の猫は丸洗い(シャンプー)しなければ駄目だとか、他猫にも伝染するから、隔離しないと駄目だとか、色々と気が滅入る指導を覚悟していた私であったが、その日は、薬が10日分出ただけだった。
「隔離しなくてもいいですか?」
「それには及ばないでしょう。」
拍子抜けと言えば拍子抜けであったが、ひとまず、ホッとした。
だが。
「あのう、そろそろワクチンの2回目なんですけど…。」
「慌てなくても大丈夫だけど、まあ、治療中でも打てるから。」
週末に再び来院することになった。
1月13日。
ワクチンを打ちに行った。
が、そのアタ坊の耳を見て、先生の顔色が変わった。
「これは…疥癬じゃないか。」
「顔にも出てます。あ、前足にもちょっと。」
助手さんが指摘する。
そう。その2〜3日前から、アタ坊の鼻のストップの辺りに、ハナクソのような乾いた塊が付いていることに、私も気が付いていた。
ハナクソと言えば、実家のななも、何か分泌物でも出るらしく、鼻の周りによくハナクソのような塊が付く。が、放っておけば自然に取れるし、無理に取ろうとすると痛がるので、見た目は悪いが、実家ではいつも、別に取ろうとはしていない。
その様子をいつも見ていたので、私はアタ坊のそれを見ても、
(こいつも、ハナクソ猫か…)
と、思っただけだったのだ。
が。
それは疥癬の症状だと言う。
先生は、アタ坊の耳から剥がれかけた皮膚を採取して、顕微鏡で調べて下さった。
「あと、左目の上も。ハゲてきています。分かりにくいかもしれませんが、正面から、左右比べてみると分かりますよ。」
助手さんに言われるままに、左右の目を見くらべてみると、確かに、左目の上の方が、毛が薄くなっている。
少なからずショックを受けた私であったが、先生がおっしゃるに、飲み薬(または注射)を週に1回、3度くらいの通院で済むとのこと。
「でも、アタちゃんの使っているタオルなどは、熱湯で消毒して下さい。」
えええっ!!
そ、そんな…。
「それ、家じゅうです(泣)。」
ビーズクッションも、こたつ布団も、ホットカーペットも。いや、私の布団だってそうじゃないか。夜、やつは私の掛け布団の上で寝ているのだから。
あああ…
「熱湯消毒じゃなきゃ駄目ですか?」
「それが一番いいんですよ。まあ、後はダイソンですかね。」
そんなの。うちには、10年ものの紙パック掃除機しかありましぇん。
(1月12日撮影)
と、いうわけで、ワクチンは見送り。
「この前の飲み薬は?」
「それは、続けて飲ませてください。」
真菌の治療は、別途継続。
これにより、ハゲの刑は確定し、アタ坊はサークルの中に収監された。
(※この写真で見ると、ダメの耳の下もハゲて見えますが、これは光の加減です。彼は今のところ何ともありませんのでご心配なく。)
そして、1週間経過。
その1週間のことは、思い出したくもない。
来る日も来る日も、鍋と薬缶でお湯を沸かしては、熱湯消毒と洗濯。洗えない布団やカーペットは、しつこいくらいに乾燥機やダニパンチをかけて、一応、消毒したつもり。
例外は、ビーズクッションで、カバーは取り外して熱湯消毒したが、中身はいかんともしがたい。掃除機で吸おうにも、中袋は伸縮性の高いニット地なので、掃除機を近付けると、袋の生地ばかりがいたずらに伸びて吸い込まれてしまう。
本当は、このクッションの上がいちばん猫に人気があったのだが、まあ、直に乗っていたわけではないし、と、上物とカバーの消毒だけで諦めた。
毛布。シーツ。布団カバー。ホットカーペットカバー。こたつ布団のカバー。こたつの内掛け毛布に、座布団カバーに、クッションに、キッチンマット。奴は食卓の椅子も好きだから、シートクッションもだし、私の部屋着も、全て熱湯消毒。窓際の安楽椅子はクッション部分を取りはずして乾燥機をかけ、この際、大事を取って、こたつとホットカーペットと座布団は撤去。
こんなに狂ったようにお湯を沸かしたのは、給湯器が壊れたとき以来である。
そして。
奴が自由に動き回っていた、リビングと寝室と台所にある布物の、消毒・洗濯がようやく終わった頃。
通院日が来た。
1月19日。
だが、しかし――。
「広がってる…」
サークルに入れてしまったため、外からはよく見えていなかったのだが、診察台の上のアタ坊のハゲは、明らかに酷くなっていた。
10日分もらった真菌の薬は、ちょうど飲ませ終わったところ。
疥癬の薬は、そもそも3回コースで、先週1回目が終わったのに、まるで改善していないのだ。
「薬を替えてみようか。」
だが、私は、何となく釈然としなかった。
だって、替えるのは、真菌の薬でしょ。メインは疥癬なんじゃないの?
前回はあれほど疥癬だと言いながら、先生はまるで、疥癬のことを忘れたかのように、今回は、真菌の薬の話ばかりしている。
ともあれ、新しい薬をもらい、疥癬の薬の2回目を流し込まれ、ハゲ囚はムショに戻った。
そして、さらに1週間。
昨日、また病院に行った。
「どうですか。少しは生えてきましたか?」
「いや、むしろ広がってます。」
広がっているどころか。
もう、何とも凄いことになってしまっているのだ。
ハゲとカサブタで、完全にニャン相が変わってしまったアタゴくん。
診察台に乗せてよく見ると、それは、私が認識していた以上に悲惨な状態だった。
目の上のハゲはカサブタとなり、それがブルドッグのようなシワ状となっている上に、カサブタが剥がれたのか、乾燥した皮膚が切れたのか、ところどころ、斑点状に血が滲んでさえいる。
前足のハゲは大きくなり、後足にも広がっている。
「ううむ…。」
先生は、絶句した。
「薬が効いてない。でも、もう、みんな使っちゃったよねえ。」
「はい、みんな使いました。」と、助手さん。
「あとは、アカラスか?――いや、猫にアカラスは聞かないよね。」
猫にもまれに出るが、基本的には子犬に良く出る病気だと言う。(後で調べたら、「ニキビダニ」であった。毛包虫というのが、毛穴などで異常繁殖して発症するそうな。)
「疥癬ではないのか…」
一番酷い、左目の上のカサブタを少し取って、再び先生は、顕微鏡を覗き込んだ。
やがて、顔を上げた先生は、
「実は、虫体が出て来ないんですよ。これだけ酷ければ、成虫なり卵なりが必ず見つかるものなのに、この前も、今回も、全く見つからないんです。」
(1月27日撮影)
それで、分かった。
先生の歯切れの悪いわけ。
疥癬なのか真菌なのか、どっちつかずの言い方をしていたわけ。
だが、他の病気はいずれも、有り得なくはないが考えにくい、という。
結局、今まで週1回だった疥癬の薬を、
「1日おきに飲ませてください。」
ということになり、今回は、ごはんに混ぜる水薬が出た。
真菌の薬は、
「前回のがあと3日分くらいあるんですけど。」
「それも飲ませて下さい。」
ある分だけ飲ませて、追加はないらしい。
そして。
「これで改善しなければ、大学病院で検査をしてもらいましょう。東大病院に、紹介状を書きます。」
と、と、と、東大病院!!!
す、すげえ…
我が家の人間も猫も、誰一人(一匹)、そんなスゴイところにかかったことはないのに。
この、新参者のチビがねえ。(感心している場合じゃない)
と、いった、いきさつを、今日、母に会ったので、問わず語りに話して聞かせた。
「凄いでしょ。うち誰も、東大病院なんて、かかったことも、行ったこともないのに。」
言いながら、ハタと気が付いた。
「いや…アナタは帝大出だったっけね。」
そう。我が母は、生まれながらに帝大出なのである。
何しろ、帝大病院で生まれたんだから。
いや、だからって、愛宕朗くん。
キミ、別にババを見習って、東大に行く必要はないんだからね。
(1月27日撮影)