ミッション・インポッシブル


 
 
 天竜いちごさんから、資料として猫の写真が欲しいと頼まれた。
 上のイラストメモが、その依頼内容である。
 何も見ないでその場でさらさらとこれが描けるのだから、さすが絵描きである。
 というより、これだけ描けるなら、資料などいらないような気もするのだが、その辺は絵描きのこだわりなのであろう。
 そんなわけで、何とか、資料になるような写真を撮るべく、頑張ってみた。
 
 
「1」の「あおり」。
 想像で描くのは最も難しいものとお見受けしたが、実は、これがいちばん、撮るのが簡単である。
 ダメちゃんは何故かいつも、私が自分のご飯を食べ終わると、食卓の下に来て私の顔を見上げる。カメラは通常、食卓の上に置いてあるから、依頼を受けたその日の夜に、すぐ撮れてしまった。
 
 

 
 
 私的には、これがいちばん可愛く撮れたと思うのだが、考えたら、この場合のダメちゃんは、魔王役なのだった。となると、
 
 

 
 
 これなんか、ちょっと魔王的かしらね。
 いや、しかし、資料としては、どちらも右前足が写っていない。
 
 

 
 
 顔の角度はイマイチだが、これだけは、前足が両方とも写っていた。
 以上、三枚の合わせ技で、何とかしてもらおう。
 
 
 で。
 その後、「あおり」以外の3ポーズを狙ってみたのだが。
 なかなか、機会がない。
 というのも、ダメちゃんはもうオヤジなので、一日のほとんどの時間は、座っているか、寝ているかである。私がカメラを持ち出せるような余裕のある時間帯には、歩いているシーンに当たることが、ほとんどないのであった。
 さて、どうしようか…と、考えているうちに、はっと思い付いた。
 一日のうちに、ダメちゃんが活発に歩きまわる時間が、一度だけある。
 朝食の前である。
 私が「朝のデモ行進」と呼んでいる、アレだ。
 とはいえ、平日の朝は忙しくてそれどころではないので、休日の今日、ウェットフードの後のカリカリを出し惜しみして、廊下を行き来するダメちゃんを撮ってみた。
 だが、歩いている猫の写真は、やはり難しい。とくに、「2」の「正面」。
 
 

 
 
 一応、曲がりなりにも資料として使えるであろう程度に撮れたのは、これ1枚のみ。
 あ、でも、また、右前足の先が写っていない。
 
 
 仕方ないので、失敗作だけどこ、これも載せてしまおう。
 これなら、足の形は分かるよね。
 
 

 
 
 というわけで、こちらも、2枚の合わせ技で何とかしてもらおう。
 
 
 次に、後ろ向きの図。
 
 
「4」を狙って歩いているところを何枚も激写したが、当然ながら、本当に後ろから撮ると、ケツしか写っていない写真ばかりになってしまう。
 せいぜい、こんなものだろうか。
 
 

 
 
 あとは「3」の「振り向いた図」であるが、これはほぼ、不可能であった。
 何しろ、振り向かせようとして後ろから関心を惹いてみると、そのままUターンして前向きになってしまうのである。
 完全に振り向いてはいないが、コレを参考にしてもらおうか。(でもこれって、ひょっとして、無修正のままだとマル禁写真かも…。)
 
 

 
 
 逆向き。どうでもいいけど、ケツがデカい。
 
 

 
 
 こうして意識して特定のポーズを狙ってみると、動物の写真ってやはり難しいんだ、ということが良く分かる。
 あちらが立てば、こちらが立たず。
 ツールと技術があれば、合成写真でいけるのかもしれないけど。
 その点、絵は便利だよな、と、改めて絵の描ける人を羨ましく思った。
 私だって、毎度、かなり無理矢理に猫漫画を作っているが、絵が描ければ、そんな苦労は最初からいらないのである。
 
 
 ところで。
 天竜さんの描く猫ルシファーは、明らかに大猫である。
 ダメちゃんサイズ。
「実際に飼っていないから大きさの感覚がイマイチ分からない」と、彼女は説明しているが、本当の理由は、彼女が私の撮った写真を資料に使ったりするから、ダメちゃんのサイズが標準として刷り込まれてしまったものと、私は考えている。
 ダメちゃんをモデルにするのは無謀だ、と、正直、私は考えていたのだが。
 ダメちゃんにも、魔王的なところがあったのである。
 
 
 と、いうわけで。
 
 
 以上。ミッション終了。
 冒頭の天竜メモは、自動的に消去されるはずである。 
 
 
 
 

 

 

 ダメちゃんの魔王的な一面(と、言うより、単なるやな奴)